乳児の貧血ポイント
- 生後4ヶ月から鉄分が足りず、貧血になりやすいです
- 貧血は発達にも影響します
- 食事やフォローアップミルクから適切に鉄分を取りましょう
- 牛乳は鉄分が少ないため1歳以降に開始しましょう
鉄分が足りないと貧血になる理由
鉄分は腸から吸収され、肝臓に貯蔵され、赤血球(の主成分であるヘモグロビン)の産生に利用されています。
そのため、鉄分が不足すると、肝臓に貯まっていた鉄分を使用します。
そして、肝臓にある鉄が無くなると、血液の成分であるヘモグロビンを作れなくなり、貧血となるのです。
乳児は貧血になりやすい
生後4ヶ月くらいまでは、母親から貰った鉄分が肝臓に沢山貯蔵されています。
しかし、生後5ヶ月くらいになると、この「貯蔵鉄」がなくなるため、貧血が高頻度で起きます。
ですので、生後6ヶ月〜2歳までは貧血になりやすいため注意が必要です。
乳児の貧血の割合
米国など一部の海外の報告によると
- 生後6ヶ月で4%
- 生後12ヶ月で12%
くらいは鉄欠乏性貧血があると言われています。
鉄欠乏(で貧血なし)も合わせるとですと、この倍くらいと推定されています。
日本人でどのくらい鉄欠乏性貧血があるのかデータはないのですが、日本人女性は鉄分の摂取量が一般的に少ないので、乳児の貧血の頻度はこのデータより高いかもしれません。
特に、貧血が起こりやすいのは;
- 出生体重が 3 kg 以下の乳児
- 完全母乳栄養の乳児
です。
母乳は鉄分が少ない?
母乳中の鉄分は 0.04 mg/dLと低いですが、吸収率が40–50%と高いです。
一方、調整粉乳は鉄分の含有量は 0.78 mg/dLと高いですが、吸収率は10%と低いです。
そのため、生後 5–6ヶ月から始める離乳食を適切に導入することが重要といえます。
貧血の症状について
貧血の症状は、一般的には;
- 皮膚や唇、瞼の結膜が青白い
- だるさや息切れ
- 活動性の低下
が多いです。乳児期に特徴的な症状としては;
- すぐ不機嫌になって泣く(易刺激性)
- 筋緊張の低下
などがあります。
貧血は発達にも影響します
鉄欠乏が続くと発達にも影響することがあります。
乳児期は、脳や神経は、とても早いスピードで発達しています。
鉄分は、脳の神経伝達物質とも関わっており、脳の発達に非常に重要です。
鉄欠乏性貧血になった子を追跡した研究で、脳の活動、知能や運動能力が低かったという報告もあります
食事から鉄分を効率よく摂取するために
完全母乳栄養が6ヶ月以降も続くと生後9ヶ月頃には鉄欠乏性貧血となります。
ですので、離乳食が徐々に進んできたら、鉄分を含む食品も取り入れていきましょう。
肉、魚、ほうれん草に鉄分は多い
肉や魚に含まれる鉄分の量は多くないですが、ヘム鉄といわれ吸収率は非常に高いです。
植物に含まれる鉄は非ヘム鉄といいます。 植物に含まれる鉄分の量は多いですが、吸収率が低いという欠点があります。
ですので、ほうれん草など鉄分の多い食事を与えるときも、ひと工夫が必要です 植物に含まれる非ヘム鉄も肉や魚と一緒に摂取すると、吸収率が上がりますので、肉類と一緒にあげると良いでしょう。
鉄分の吸収率をあげるために
鉄の吸収率をあげるものとして、ビタミンCやクエン酸があります。
ビタミンCはブロッコリー、ピーマン、カリフラワーなどに多いです。
クエン酸は柑橘類の果汁にも多いですが、果汁は虫歯の原因になるので1歳を過ぎてからにしましょう。
フォローアップミルクは鉄分が多い
フォローアップミルクは鉄分が 1.1 mg/dLと多く、吸収率も粉ミルクより高く、20–30%といわれています。
フォローアップミルクは粉ミルクより脂肪分が少なく、カロリー摂取不足になることがあるので、開始は生後9ヶ月くらいが良いでしょう。
牛乳は1歳未満にNGな理由
『牛乳は1歳を過ぎてから』と聞いた方も多いでしょう。
この理由は、鉄分の摂取と大きく関連しています。
牛乳の鉄分は 0.01〜0.02 mg/dLと非常に低く、鉄の吸収率は10%以下です。
さらに、牛乳は、他の食品(肉や野菜)から摂取した鉄分の吸収率を低下させます。
このため、1歳未満のお子さんに飲ませると、鉄分の摂取量が減り、鉄分の吸収効率が悪くなります。
このように、鉄欠乏性貧血になりやすくなるため、1歳未満の牛乳摂取はオススメできません。