髄膜炎って何ですか?
髄膜炎(ずいまくえん)は脳や脊髄を保護する膜(髄膜)に炎症がある状態をいいます。
▪️ 髄膜炎が起こる理由
髄膜炎の原因はほとんどが、ウイルスや細菌による感染症です。
頻度は多くありませんが、薬剤(免疫グロブリンなど)から髄膜炎を起こすこともあります。
▪️ ウイルスや細菌が髄膜までたどり着くには
人間は無菌ではなく、鼻・喉・皮膚・腸には常に細菌がいます。
最初は鼻、喉や皮膚などにいる菌が、体調をくずした際に血液に入り込みます。
血液中で細菌が増殖した状態を、菌血症といいます。
さらに、血液中を巡っていた細菌が、脊髄や脳の周りを囲う膜(髄膜)に侵入した場合に髄膜炎になります。
髄膜炎は 『鼻・皮膚の菌→血液に侵入→髄液に侵入』という経路を菌が侵入して起こるといえます。
髄膜炎の原因菌について
▪️ 髄膜炎の原因となる細菌は、年齢によって異なる
月齢・年齢によって行動範囲、細菌との接触、免疫能が異なるので、かかりやすい菌が異なります。
▪️ 3ヶ月以下で多い細菌
3ヶ月以下で多い細菌は;
- GBS(B群レンサ球菌):45〜50%
- 大腸菌:20〜25%
- Hib(インフルエンザ桿菌B/ ヒブ):15〜20%
- クレブシエラ:5〜10%
- リステリア:1〜2%
この時期の特徴として、B群溶連菌 (GBS)や大腸菌が多い点です。
これは、産道にこれらの菌がいると、出産を契機に感染してしまうことがあるからです。
妊婦健診でGBSの検査をして、陽性の場合には出産前に抗生剤の点滴をするのも、感染を予防するためです。
▪️ 4ヶ月〜5歳で多い細菌
生後4ヶ月以上で多い起因菌は;
- Hib(インフルエンザ桿菌b型/ヒブ):70%
- 肺炎球菌:20〜25%
となっています。
この2種類への感染のリスクが高いため、生後3ヶ月からワクチンで予防を行います。
▪️ 6歳以上で多い細菌
Hibは3歳以下で重症化したすい菌なので、6歳を超えてくると肺炎球菌とHibの頻度が逆転しています:
- 肺炎球菌:60%
- Hib(インフルエンザ桿菌b型/ヒブ):5〜10%
髄膜炎の症状
多くは発熱、頭痛、嘔吐が代表的ですが、乳幼児は症状にあまり決まったパターンがなく、診察での判断が困難なケースもあります。
▪️ 頻度の多い症状
頻度の多い症状は、
- 発熱:85%
- 項部硬直(首が硬い):78%
- 易刺激性(不機嫌):65%
- 嘔吐:60%
- けいれん:20%
です。
項部硬直は新生児で認めないことが多いです。
髄膜炎の診断について
▪️ 基本は髄液検査
基本的に髄液の検査をします。
腰の背骨の間に細い針を入れて、髄液という液体をとります。
髄液を細菌培養の検査に出して、菌が生えてくるか確認します。
あとは、血液検査やCTをとり、全身状態や脳の状態を確認することが多いでしょう。
熱性けいれんと髄膜炎の見分けは難しいことも
髄膜炎でも痙攣(けいれん)を起こすことはあります。
ですが、髄膜炎のほうがぐったりしていることが多いです。
また、けいれんも全身性でなく部分的なひきつけ(部分発作)であったり、けいれんを反復したり、1回のけいれん発作が長かったりします。
また、けいれんを起こす前から、意識が悪かったりということもあります。
髄膜炎の場合、大半が単純型の熱性けいれんとは異なる様式で痙攣することが多いです。
髄膜炎の治療について
まずは細菌を退治するために、抗生物質を点滴から使用します。
髄液は抗生物質が届きづらいため、大量の抗生物質を点滴から使用します。
▪️ ステロイドを併用することもあります
医師によって好みがわかれますが、ステロイドを使用することもあります。
特にインフルエンザ桿菌の場合には有効性が示されています。
痙攣を繰り返す場合には、抗けいれん薬を使用します。
髄膜炎は予防が大事
髄膜炎は命を落としたり、重い後遺症が残る可能性のある感染症です。
肺炎球菌やインフルエンザ桿菌(Hib)はワクチンで予防可能です。
日本でも2008年よりワクチンが導入されて、かなり予防効果がでています。
ワクチンによって、これらの髄膜炎のケースは90%前後も減少しているといわれています。
ですので、予防接種をして感染を予防しておきましょう。