前回までに、メタ解析の結果を中心に、抗ヒスタミン薬、去痰薬、咳止め、ハチミツ、気管支拡張薬、解熱剤、整腸剤、抗生物質(抗菌薬)の有効性を検証してきました。
今回は、これらの結果をまとめ、簡単に説明していければと思います。
小児のかぜ薬の科学的根拠のまとめ
前回までの結果をまとめながら、簡単にみていきましょう。
- 抗ヒスタミン薬(ペリアクチンなど):鼻症状には無効
- 去痰薬(カルボシステインなど):10%程度で咳が短くなる
- 鎮咳薬(メジコンなど):咳と睡眠は改善するが、副作用のリスクあり
- ハチミツ:咳と睡眠が改善(1歳未満はNG)
- 気管支拡張薬:有効性なし
- 解熱鎮痛薬:頭痛・筋肉痛・耳の痛みが改善
- 整腸剤:下痢の期間が1日程度短縮
- 抗生剤:有効性なし、副作用のリスク上がる
でした。
これらの結果から言えること
これらの結果から、ほとんどのかぜ薬は無効であるか、軽度の有効性があるのみです。
「かぜを治す薬はない」とお聞きしたことがあるかもしれませんが、理由は上の研究結果の通りです。
ですが、薬がないからといって、かぜが治らないわけではありません。
正常な免疫力があれば、ほとんどのウイルスは自然に体から排除することができます。
誤解を恐れずに言えば、かぜを治す家庭で、かぜ薬の存在はあまり重要ではありません。
薬にはリスク(副作用)があります
かぜ薬は安全と思い込んでいる方が多いですが、実はそうでもありません。
薬には必ず副作用があるので、使用する薬は必要最小限に抑えるほうが良いです。
上の表を見ていただくだけでも、かぜでよく処方される薬が、決して安全ではないことがわかるでしょう。
市販薬にも気をつけてください
「市販薬になっているくらいだから、こどものかぜシロップは安全なのでは?」
と考えている方々もいます。ですが、実はそうでもありません。
例えば、アンパンマンのこどもかぜシロップは、そのパッケージから絶大な人気がありますが、第一世代の抗ヒスタミン薬が入っています。
これらこどもの市販薬には「3ヶ月以上から使える」と宣伝されているものもあります。
控えめにいっても、5〜6歳未満のお子さんに、有効性がはっきりせず、副作用の強い薬はオススメできません。
病院・クリニックで行なっていること
「では、病院・クリニックの診察は何のために行われているのでしょうか?」
と疑問を持たれるかもしれません。
医師による診察の目的は
- 本当にかぜでよいのか?
- 入院の適応があるか?治療の適応があるか?
- ご家庭でできることの相談
をみています。
本当にかぜでよいのか?
かぜを診察するというより、重大な疾患がないかを見ています。
重大な疾患というと;
- 肺炎や気管支炎
- 喘息
- 尿路感染
- 髄膜炎
などが該当します。
治療や入院の適応についても診ています
例えば胃腸炎でも脱水がひどければ点滴が必要ですし、水分が全然とれていないなら入院が必要になります。
こういった治療や入院管理の必要性も、外来では判断をしています。
ご家庭でできることの相談
かぜの治療に一番大切なことは、適切な水分・栄養の摂取と安静です。
ご家庭で、これらが円滑にできるように相談にのるのも外来の役割です。
- どのような水分を摂取したらよいか
- 食事はどうしたらよいか
- お風呂は入るべきか
- 解熱剤はどのような時に使用すべきか
など、様々な相談にも小児科医はのっています。
ご家庭で保護者の方々が一人で悩まないよう、辛さを抱え込まないようにするのも、外来診察で大事な仕事の1つです。
まとめ
今回は4回にわたって、かぜ薬の系統的レビューとメタ解析の結果を紹介してきました。
かぜ薬の適切な使用は、薬の有効性と副作用の両面を知ることかが非常に重要です。
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