- こどもも脂肪肝になるのですか?
- 肥満になると、どうして脂肪肝になるのでしょうか?
日本は、2000年代まで小児肥満は増加し続け、現在は横ばいになっています。
世界的には小児肥満は増加し続けており、4000万人以上の小児肥満がいるといわれています。
肥満になると、全身の様々な臓器に悪影響をすることがあります。
その1つに脂肪肝があります。
小児の脂肪肝について
肝臓に脂肪が蓄積することを「脂肪肝」といいます。
過剰な栄養摂取をすると、肝臓に脂肪がたまるため、脂肪肝になります。
このため、肥満の増加に伴って、小児の脂肪肝が増えているといわれています。
脂肪肝の定義・特徴
脂肪肝は、肝臓の重量のうち5%以上が脂質をしめる場合をいいます。
小児の脂肪肝の特徴として、
- 肥満児
- 男児
に起こりやすいと言われています。
海外の報告になってしまいますが、742名の小児で
- 小児の9%に脂肪肝あり
- 小児肥満の場合、38%で脂肪肝あり
とされています。
小児の脂肪肝の診断について
小児の脂肪肝ですが、診断は
- 血液検査
- 画像検査
の両方をみることが多いでしょう。
特に小児の場合、無症状であることがほとんどなので、小児肥満をみたら肝臓も心配する必要があるといえます。
血液検査
血液検査では、
- 肝機能(ASTやALT)
- 肝臓の線維化(血中ヒアルロン酸や4型コラーゲン)
などをみます。
そのほか、脂肪肝が悪化すると、血小板の数が減ることがあります。
画像検査
画像検査は
- CT
- 超音波
- MRI
の3つの選択肢があります。
ですが、脂肪肝の精査でCTを使用することはまずないでしょう。小児の場合、被曝が将来の悪性腫瘍の発生に影響することがあるので、慎重に行いたいところです。
外来では超音波検査が一般的と思いますが、超音波では
- 脂肪のため肝臓が光って見える(Bright Liver)
- 肝臓が大きくなっている
といった所見があります。
MRIを撮影すると、脂肪化の程度や、線維化の検出が可能となります。
小児の脂肪肝の治療について
こどもの脂肪肝は肥満との関連が強いため、まずは肥満を改善させることに注力します。
治療の選択肢として、
- 食事・運動療法
- 薬物療法
があります。
食事療法について
肥満を改善することで脂肪肝の改善を目指すのが基本です。
具体的には、
- 低脂肪食(脂質エネルギーを20-30%に)
- n-3多価不飽和脂肪酸の食品をとる(青魚など)
- 糖質が少なく、線維質の多い食品をとる
といった指導になります。あとは、
- ジュース
- 清涼飲料水
の習慣的な摂取を控えるようにお願いします。
運動療法について
小児肥満のお子さんは運動不足であることが多いので、
- 毎日30〜60分 くらいの運動(有酸素運動)
- テレビ・ゲームなどで画面をみる時間を2時間以内に
と指導します。
あとは、しっかりと睡眠をとるようにもお話しをします。
薬物療法について
小児の脂肪肝に関しては、薬物療法のエビデンス(科学的根拠)は不十分ですが、成人で有効であったデータを参考に、
- ビタミンE
- DHA
- ビオグリタゾン
などを使用することがあります。
有効性については、今後のエビデンスの集積が望まれます。
小児の脂肪肝の将来について
- 小児の脂肪肝を放置するとどうなるのでしょうか?
と疑問がわいた方がいるかもしれません。
こちらの論文は、米国の小児の脂肪肝の患者66名を20年追跡した研究ですが、
- 糖尿病は4例
- 肝臓の線維化は4例
- 肝硬変は2例(移植が必要)
- 死亡は2例
となっています。
追跡開始は10歳前後ですので、30歳時点でこの結果になります。
まとめ
今回は小児の脂肪肝について説明してきました。
小児肥満と密接にリンクしているので、こどもの肥満をみたら肝臓のことも心配してあげたほうが良いでしょう。
治療は食事・運動の改善が基本となります。
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