小児科

B型肝炎ウイルスとワクチンについて解説します③ 〜よくある質問にお答えします〜

前回、B型肝炎ウイルスに感染した場合に起こる症状、慢性化のリスク、ワクチンについて解説してきました。

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最近はB型肝炎ウイルスの予防接種も定期化され、普及してきています。

しかし、

  • 子どもにB型肝炎予防って必要?
  • お産の時以外に感染することもあるの? 

などなど、様々な質問をうけることがあります。

今回は、B型肝炎ウイルスのワクチンについて、よくうける質問にお答えしてみようと思います。

B型肝炎について

 肝炎はお酒やメタボが原因じゃないんですか?

  • 肝炎って、お酒やメタボが原因でなる「大人の病気」じゃないのですか?

と質問されることがあります。

確かに、アルコール性や肥満に伴い肝炎を起こすことがあります。

ですが、肝炎を起こすウイルスに感染することでも起こる病気です。

これは、大人も子供も一緒で、誰にでもかかる可能性があるのです。

 

 B型肝炎ウイルスは移りやすいのですか?

B型肝炎ウイルスは、一般的には感染力(ウイルスが移る能力)が強いといわれています。

C型肝炎やHIVなども血液感染するウイルスとして有名ですが、B型肝炎のほうが血液中でウイルスの量が多くなりやすく、感染のリスクが高いといわれています。

 

B型肝炎になると、どうなるか

小児の場合、無症状が多いです

B型肝炎は、少なくとも50%程度は感染しても症状が出ないといわれています。

年齢別にみると

  • 12ヶ月未満:ほぼ 95%
  • 1−4歳:約90%
  • 5歳以上:約65%

で無症状といわれています。

このため、気づいたら感染していたというケースもあります。

感染した後に体から排除されないのですか?

確かに無治療でも治ることが多いですが、感染したあとにウイルスが排除されず、肝臓に住み着いてしまうこともあります。

この状態を「キャリア」といいます。

特に、小児ではキャリアになりやすいため、予防が必要と考えています。

 

「キャリア」になると、その後はどうなるのでしょうか?

キャリアになった後、約1割が肝機能が異常となる「慢性肝炎」となります。

さらに、この慢性肝炎の状態が続くと、

  • 肝硬変
  • 肝がん

へと進行する可能性もあるのです。

 

B型肝炎ワクチンについて

日本でB型肝炎の患者が多いのですか?

日本ではおよそ130〜150万人程度のB型肝炎ウイルスの患者がいると推定されています。

このなかには、

  • 予防法をしらずに感染してしまった
  • 自分が感染していることに気づいていない

といった方々もいるのが実情です。

日本以外でもB型肝炎ワクチンは行なっているのですか?

2015年では、WHOに加盟している194カ国のうち、184カ国であ全ての赤ちゃんへの接種されています。

日本だけ行なっているワクチンではなく、むしろ世界的に推奨されているワクチンです。

 

なんで赤ちゃんのうちに接種しないといけないですか?

こどもに移るのでしょうか?

B型肝炎は血液感染のイメージが強いため、分娩時の母子感染以外では移らないのでは?と質問されることもあります。

しかし、B型肝炎ウイルスは唾液や体液(汗・涙も含む)からも感染することがあります。

B型肝炎ウイルスの感染の3割程度は、分娩時の母子感染以外といわれています。

例えば、小児が長時間にわたる集団生活で感染することもあります。

このため、乳児期からのワクチンが推奨されています。

 

1歳未満でB型肝炎ワクチンを接種するのは、普通ですか?

  • これまで定期接種でもないのに…
  • 成人してからで良いのでは?

などのご意見をいただくこともあります。

まず、保育園など集団生活で感染するリスクがあるため、より早期からの接種を勧めています。

例えば、アメリカなどの先進国でも0歳時から接種しています。

 

妊婦健診で母親がB型肝炎ウイルスのキャリアと判明した場合は、どうするのですか?

赤ちゃんがお腹にいるとき、母がB型肝炎ウイルスのキャリアと判明することがあります。

この場合は、予防接種のスケジュールなども変わり、

  • 生後すぐ:抗HBs免疫グロブリンとワクチン接種1回目
  • 1ヶ月:ワクチン接種2回目
  • 6ヶ月:ワクチン接種3回目

となります。 

まとめ

 B型肝炎は予防可能で、ワクチンが導入されました。

定期接種になり普及は広がりましたが、ワクチンへの正しい理解はまだ時間がかかりそうです。現に、医療関係者からも、質問をうけることも多いです。

実はB型肝炎はこどもが感染しやすい環境にあり、予防が大事なこと理解することも大切です。

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。