小児科

SQ標準化舌下投与型イネ科花粉免疫療法:3年間の治療後、2年間の追跡により疾患修飾効果を確認したランダム化試験[UK編]

 
本研究は、イネ科花粉免疫療法(AIT)がアレルギー性鼻結膜炎に対して長期的な疾患修飾効果を持つことを検証するために、3年間の治療と2年間の追跡期間を含む5年間の二重盲検プラセボ対照試験を実施し、その有効性と安全性を評価した。
 
参考文献

Durham SR, Emminger W, Kapp A, de Monchy JG, Rak S, Scadding GK, Wurtzen PA, Andersen JS, Tholstrup B, Riis B, Dahl R. SQ-standardized sublingual grass immunotherapy: confirmation of disease modification 2 years after 3 years of treatment in a randomized trial. J Allergy Clin Immunol. 2012 Mar;129(3):717-725.e5. doi: 10.1016/j.jaci.2011.12.973. Epub 2012 Jan 29. PMID: 22285278.

SQ標準化舌下投与型イネ科花粉免疫療法:3年間の治療後、2年間の追跡により疾患修飾効果を確認したランダム化試験[UK編]

研究の背景/目的

特異的免疫療法の主な目的は、免疫系の変化による持続的な効果であり、これは長期間の試験によってのみ実証できる。

SQ標準化イネ科花粉免疫療法タブレット(Grazax、Phleum pratense 75,000 SQ-T/2,800 BAU、ALK社、デンマーク)またはプラセボを用いた5年間の二重盲検プラセボ対照試験を実施し、3年間の治療後に2年間の盲検追跡を行うことで、持続的な有効性と疾患修飾効果を検証するために、本研究が実施された。

研究の方法

この多国籍フェーズIII試験には、中等度から重度のイネ科花粉によるアレルギー性鼻結膜炎(喘息の有無を問わない)を有し、対症療法のみでは十分に管理できなかった成人が参加した。最終的に238名が試験を完了した。評価項目には、鼻結膜炎の症状および薬剤使用スコア、総合スコア、喘息症状および薬剤使用スコア、生活の質(QOL)、重症症状の日数、免疫学的指標、安全性パラメータが含まれた。

研究の結果

試験期間中の5つのイネ科花粉シーズンを通じて、鼻結膜炎の日常的な症状スコアは、免疫療法タブレット群でプラセボ群と比較して25~36%の有意な低下(P ≤ .004)を示した。

鼻結膜炎DMS(症状および薬剤使用スコアの減少率)は20~45%の低下を示し(シーズン1~4ではP ≤ .022、シーズン5ではP = .114)、加重鼻結膜炎総合スコアは27~41%の低下(P ≤ .003)を示した。

さらに、ピーク時のイネ科花粉曝露期間における重症症状の日数は、全シーズンで免疫療法群の方がプラセボ群より少なく、その相対的な低下率は49~63%(P ≤ .0001)であった。有効性は、アレルゲン特異的抗体反応の長期的な有意な変化によっても裏付けられた。安全性に関する問題は認められなかった。

結論

本試験の結果は、SQ標準化イネ科花粉免疫療法タブレットが、アレルギー性鼻結膜炎の有効な対症療法に加えて、疾患修飾効果を有することを確認するものである。

考察と感想

ざっと本文をよんだ感じですが、主要な結果は以下の通りです:

  1. 鼻結膜炎症状の改善:症状スコア(DSS)が25~36%、薬剤使用スコア(DMS)が20~45%低下。
  2. 疾患修飾効果の確認:治療終了後2年間の追跡期間で、総合スコア(RCS)が27~41%低下
  3. 重症症状の軽減:ピーク花粉シーズンにおける重症症状の日数が49~63%減少
  4. QOL(生活の質)の向上:治療群で25~32%の改善
  5. 喘息症状の改善:喘息合併患者において、喘息総合スコア(ACS)が39~44%低下
  6. 免疫学的変化:特異的IgG4、IgE阻害因子、抗原提示抑制能が治療群で有意に改善し、治療終了後も持続

3年の治療+2年の追跡の期間で有効性を証明できたという点では、非常に意義のある研究と思います。

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。