Montelukast Use and the Risk of Neuropsychiatric Adverse Events in Children
JAMA Pediatr. Published online January 21, 2025. doi:10.1001/jamapediatrics.2024.5429
モンテルカスト使用と小児における神経精神的有害事象のリスク [スウェーデン]
研究の背景/目的
モンテルカストの使用に関連する神経精神的有害事象のリスクが指摘されており、米国食品医薬品局(FDA)は2020年にこのリスクについての警告を追加した。しかし、そのメカニズムは十分に解明されておらず、特に小児に関する観察研究のエビデンスは限られている。本研究では、小児および青年におけるモンテルカストの使用と神経精神的有害事象のリスクの関連を評価することを目的とした。
研究の方法
本研究はスウェーデン全国のレジストリデータを用いたコホート研究であり、2007年1月1日から2021年11月30日までの期間を対象とした。対象は6歳から17歳のモンテルカスト使用者および長時間作用型β作動薬(LABA)使用者とした。データ解析は2023年12月から2024年4月にかけて実施された。
主要アウトカムとして、神経精神的有害事象全体を評価し、これには不安、うつ、睡眠関連障害、自殺および自殺行動、活動・注意・行動の制御障害、混乱および精神病様症状を含めた。診断コードおよび神経精神症状に対する処方薬のデータを基に評価を行った。薬剤開始から中止までの期間を追跡し、交絡因子の調整および選択バイアスの補正のために加重法を用いた。ハザード比(HR)の推定にはプールドロジスティック回帰分析を適用した。
研究の結果
最終的に74,291人の小児(平均年齢12.3歳、47.7%が女性)が解析対象となり、26,462人がモンテルカストを使用し、47,829人がLABAを使用していた。平均追跡期間は5.8か月で、モンテルカスト群で310件、LABA群で566件の神経精神的有害事象が確認された。加重後の神経精神的有害事象の発生率は、モンテルカスト群が100患者年あたり2.39件、LABA群が2.41件であり、加重後のハザード比は0.99(95%信頼区間 0.84-1.16)であった。
また、不安(HR 0.79、95% CI 0.54-1.14)、うつ(HR 1.16、95% CI 0.70-1.95)、睡眠関連障害(HR 0.93、95% CI 0.76-1.13)、自殺および自殺行動(HR 1.31、95% CI 0.64-2.69)、活動・注意・行動の制御障害(HR 1.27、95% CI 0.84-1.90)、混乱および精神病様症状(HR 0.51、95% CI 0.05-5.53)といった個別の神経精神的有害事象においても、モンテルカスト群とLABA群の間に有意な差は認められなかった。サブグループ解析および感度分析においても結果は一貫していた。
結論
本研究では、小児および青年におけるモンテルカストの使用と神経精神的有害事象のリスクに関連は認められなかった。本研究を含む複数の観察研究の結果を統合することで、小児および青年における喘息およびアレルギー性鼻炎の管理に関する臨床実践の指針として活用できる可能性がある。
考察と感想
本研究の結果は、モンテルカストの使用が小児および青年における神経精神的有害事象のリスクと有意に関連しないことを示した。過去の症例報告や警告の影響により、モンテルカストの神経精神的副作用についての懸念が高まっていたが、本研究を含む大規模な観察研究では、一貫して有意なリスク上昇が認められていない。これにより、臨床現場においては、喘息やアレルギー性鼻炎の治療選択肢としてモンテルカストを使用する際に、過度な懸念を持つ必要はないと考えられる。ただし、本研究の結果は観察研究に基づくものであり、診断コードや処方記録のみに依存しているため、未報告の症状や個々の症例における感受性の違いを完全に反映しているとは限らない。また、短期間の追跡であったため、長期的な影響についてはさらなる研究が必要である。今後は、より詳細な患者背景の分析や、異なる集団での研究を通じて、モンテルカストの安全性についてより深く理解することが求められる。
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