- 『けいれん(ひきつけ)の原因って何でしょうか?』
- 『こどもが熱性けいれん以外でも、けいれんを起こすことはありますか?』
小児のけいれんと聞くと、熱性けいれんが代表的なため、あまり他の疾患で起こすイメージがないかもしれません。
もちろん小児の場合は熱性けいれんが圧倒的に多いのですが、他にもけいれんを起こす疾患が多数あることを念頭に小児科医は診察しています。
今回は、小児のけいれんの原因について、簡単にまとめられればと思います。
主要なけいれんの原因
まずは主要なけいれんの原因を押さえておきましょう。
大きく2つにわけて、熱がある場合と熱がない場合です。
熱がある場合のけいれんとしては、
- 熱性けいれん
- 髄膜炎・脳炎
- 急性脳症
になります。熱がない場合のけいれんとしては、
- 胃腸炎関連けいれん
- 小児てんかん
- 泣き入りによるひきつけ
- 頭蓋内疾患
に分けられます。
熱性けいれんについて
熱性けいれんについては、こちらで詳しく解説しています。
簡単にまとめると、
- 日本人の小児の7〜8%に起こるけいれん
- 発熱後、24時間以内の短時間のけいれんが多い
- 6ヶ月〜6歳くらいまでに起こる
ことが特徴です。
「悪寒戦慄(おかんせんりつ)」は熱性けいれんとよく間違われる
熱が急激に上昇する場合、体全体が小刻みに震えることがあります。
大人でも急に発熱したとき、ブルブルと震えてしまうことありますよね。小児でも同様の現象が起きることがあります。
このブルブル震える現象を「悪寒戦慄」というのですが、手足の震えがけいれんと間違えてしまうことがあります。
けいれんとの見分け方のポイントとして、
- 意識が正常か(呼びかけに応じるか)
- 視線が偏ってないか(ずっと片方をみている)
などが参考になります。悪寒戦慄であれば、意識は正常ですし、視線が偏ることもありません。
髄膜炎・脳炎について
髄膜炎は、
- 脳の表面にある「髄膜」
- 脳の周囲にある「脳脊髄液」
の中で、細菌やウイルスが増殖して炎症が生じた状態をいいます。
一方、脳炎は、脳の組織内で病原体が増殖して炎症が起きている状態をいいます。
明確に区別できない症例も数多くあります。そのため髄膜脳炎と言われることもあります。
髄膜炎・脳炎の特徴
髄膜炎のことはこちらで一通り解説しています。
髄膜炎や脳炎の特徴として、
- ぐったりしている
- 意識がずっとぼんやりしている
- けいれんを何度も繰り返す
といった特徴があります。
治療が遅れたり、使用した薬が有効でないと、後遺症が起こることがあります。
ワクチンでの予防が大事です
かつてヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンが普及する前が、これらの細菌による髄膜炎のこどもが一定数いました。
しかし、近年はこれらの予防接種が普及したのもあり、髄膜炎のこどもをみる機会は減少しています。
急性脳症について
急性脳症は、病原体に感染した後、体が過剰に反応してしまい炎症が起こり、脳が浮腫んでしまう状態をいいます。
症状としては、
- 繰り返す嘔吐
- 繰り返すけいれん
- 意識障害
が特徴としてあります。
インフルエンザウイルスによる脳症が多いですが、これ以外にもヘルペスウイルス、アデノウイルスやロタウイルスなどで急性脳症が起こることがあります。
てんかんについて
次はてんかんについて説明していきます。詳しくはこちらで説明しています↓↓
まとめますと、小児のてんかんは
- およそ100人に1人に認める
- 熱がないときにも、けいれん発作がある
- 発作を繰り返す
といった特徴があります。
もちろん熱があるときに痙攣発作を起こすことがありますので、最初は熱性けいれんと区別ができないことも多々あります。
胃腸炎関連けいれん
胃腸炎にかかった場合にけいれんを起こすことがあります。これを「胃腸炎関連けいれん」と読んでいます。
詳しくは上の記事に記載していますが、胃腸炎関連けいれんの特徴を端的にまとめると、
- 1〜2歳頃に多い
- 胃腸炎にかかった際、熱がないのにけいれんを起こす(熱があることも…)
- 1〜2分程度のけいれんを繰り返す
- けいれんとけいれんの間は意識が正常
- 血液検査で異常はなく、後遺症を残さない
を特徴にしています。
泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)
泣き入りひきつけは、
- 泣きすぎて息が吸えない、吐けない
- 呼吸が有効にできない
- けいれん発作や脱力する
- 1〜2分程度で回復する
の順に起こることが多いです。
6ヶ月〜1歳くらいの乳幼児に多く、脳や呼吸中枢の未熟性が原因と考えられています。
後遺症を残すことは基本的にありませんが、鉄分不足のこともあるので、貧血の検査はしておいたほうがよいでしょう。
頭蓋内疾患について
頻度としては非常に稀ですが、頭の中の疾患でけいれんを起こすことがあります。
代表的なものとして、
- 脳腫瘍(典型的には朝方の頭痛が長期間続く)
- 脳出血(急激な頭痛を伴う)
- 脳の血管の走行異常(もやもや病など)
などが挙げられます。
まとめ
今回は小児のけいれんの原因について簡潔にまとめました。
熱性けいれんが代表的ですが、それ以外にも数多くの疾患を念頭に小児科医は診察をしています。