1歳未満の乳児(赤ちゃん)の嘔吐・下痢・発疹について知りたい保護者の方々へ
小児科外来では、「急な発熱」や「咳・鼻水」で受診されるケースが最も多いですが、次に多い受診理由が
- 『急に吐いてしまいました』
- 『下痢があります』
- 『変なブツブツ(発疹)が出ています 』
です。
ついでに、どのような点に気をつけて赤ちゃんの様子をみたらよいのか、気になっている方も多数いると思います。
そこで、本記事では下記内容を解説します。
■ 本記事の内容
- 赤ちゃんの嘔吐について
□ 胃食道逆流
□ 注意したほうがよい嘔吐
□ 胃腸炎について
□ 吐き気どめについて - 赤ちゃんの下痢について
□ 下痢の見分け方
□ 下痢の原因について - 赤ちゃんの発疹について
今回は、赤ちゃんの起こしやすい症状である嘔吐・下痢・発疹などを中心について説明していこうと思います。
赤ちゃんの嘔吐について
赤ちゃんの嘔吐といっても、様々な理由があります。
最も多いのが、いわゆる「授乳後の吐き戻し」で、基本的に心配いらないことが多いです。
そのほか、感染症の流行の時期では、胃腸炎による嘔吐も多いでしょう。
▪️ 胃食道逆流について
赤ちゃんは体の構造上、嘔吐しやすくなっています。
第一に、赤ちゃんの胃は入り口(噴門といいます)の筋肉が弱いので、胃から食道へ逆流しやすくなっています。
このため、赤ちゃんは哺乳後に嘔吐してしまうことがあります。このことを「胃食道逆流」と呼んでいます。
こちらの記事に詳しく書いてありますが、
- 泣いた時
- 哺乳と同時に空気をたくさん飲んでしまった時
- 食べ過ぎた時
- お腹を圧迫してしまった時
などに、簡単に嘔吐してしまいます。
嘔吐後もけろっとして元気な様子でしたら、特別な心配はいらないことが多いでしょう。
▪️ 注意したい赤ちゃんの嘔吐について
『どのような嘔吐に気をつけたら良いですか?』と質問されることが、しばしばあります。
注意したい赤ちゃんの嘔吐の1つに、肥厚性幽門狭窄があります。
特徴としては、
- 生後1ヶ月未満の赤ちゃんが
- 哺乳後に噴水(マーライオン)のように何回も吐く
のが典型的です。この「噴水状の嘔吐(マーライオンのような)」が続く場合は、小児科に受診しましょう。
▪️ 胃腸炎について
胃腸炎も圧倒的に多いでしょう。特に、外出をするようになったり、保育園に行きはじめ、ご家族の胃腸の調子が悪い時に起こりやすいです。
胃腸炎に罹患した場合、多少の嘔吐や下痢、食欲低下は仕方ありませんが、注意したいのは水分の喪失による脱水です。
経口補水液や母乳・ミルクなどで、しっかりと水分を補うようにしましょう。
▪️ 吐き気どめについて
小児科でもよく吐き気どめとして
- ナウゼリン
- プリンペラン
などが処方されていますが、実はこれらの薬の有効性は科学的に証明されておらず、副作用の点からもあまりお勧めしていません。
有効性が不確かなのに、時に重い副作用のある「わりに合わない」薬と考えています。現に欧州などの小児の胃腸炎のガイドラインには、薬は選択肢にすら入っていません。
下痢について
下痢も赤ちゃんの受診理由として多いです。 下痢についてはこちらで詳しく解説しています。
小さいお子さんですと、本当に下痢か否かで迷ってしまうことがあります。
また、原因となる病原体(ウイルスなど)について、興味のある方もいるでしょう。
▪️ 本当に下痢かどうか?
特に月齢の低い赤ちゃんですと、普段のうんちも柔らかく、回数も多いため、下痢かどうか判断に迷うことがあります。
ポイントとしては「いつもとくらべてどうか」という点でしょう。
いつもと比べて、排便の回数が多く、便の正常が明らかに軟らかい・水っぽいのであれば「下痢」といえるかもしれません。
▪️ 下痢の原因となる病気について
下痢を起こす疾患として、ウイルス性の胃腸炎が本当に多いです。
特に
- ノロウイルス
- ロタウイルス
は秋から冬にかけて流行します。詳しくは以下の記事に書かれています。
これらのウイルスの特徴として、発熱しやすい、嘔吐・下痢の程度の回数が多い、脱水をしやすいといった点があげられます。
■ ペットについて
ウイルス性以外にも、細菌によって下痢が起こることもあります。
例えば、ペットを飼っていると、ペットの常在菌(カンピロバクターやサルモネラ)が赤ちゃんに感染して下痢や血便を起こすケースがあります。
「ペット&あかちゃん」というと、可愛いコンビで微笑ましく感じてしまいますが、小児科的には危険な組み合わせですので、それなりにリスクがあるのは知っておいてよいと思います。
血便を主訴に受診された赤ちゃんの便の培養検査から、サルモネラなど細菌が検出されるケースはそれなりにあります。
■ 食品について
固形物を食べれるようになったら、食品にも注意が必要になってきます。
なかには食中毒を起こしてしまうこともありますので、調理方法や清潔については徹底しましょう。
乳児は成人と異なり、常在菌の発達が未熟です。このため、大人より食中毒の起因菌に感染しやすいことがあります。
発疹について
発疹と一言でいっても、様々なものがありますが、今回は感染症関連についてフォーカスしたいと思います。
発疹ときいて真っ先に思い浮かべるのは
- 突発性発疹
- 風疹
- みずぼうそう
- はしか
- りんご病
あたりではないでしょうか?
いずれもウイルスに感染して、体がウイルスに反応をして発疹が出てきます。
■ 突発性発疹について
突発性発疹については、こちらに必要な知識は書かれています。
「生まれて初めて発熱しました」
と受診された場合、多くの小児科医は突発性発疹を疑って保護者の方に説明をします。
■ 水痘・麻疹について
最近はワクチン接種率が向上してきており、みかける機会がやや減ってきましたが、水痘も乳幼児の発疹として多いです。
麻疹(はしか)はさらに減っています。確かに、時々、流行(アウトブレイク)を起こしていますが、ワクチン接種率の向上に伴い、こちらの感染症もかなり減ってきています。
特に、いまの若手の小児科医の先生は「麻疹をみたことがありません」という方もいるのではないかと思います。
まとめ
今回は、
- 嘔吐
- 下痢
- 発疹
の3点を簡単に説明してきました。
それぞれの詳しい説明もありますので、リンク先を読んでみるとよいでしょう。
病気になったり、感染症にかかってからだと、精神的にも時間的にも調べる余裕がないかもしれません。
普段から小児の医療情報にアクセスしておき、有事に備えておくのも良いでしょう。
当ブログも、情報アクセスの一環として、気軽に利用していただければと思います。
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