小児の肥満について、これまでに様々な記事を書いてきました。
こどもの肥満は将来の糖尿病や心疾患のリスクになりえるので、早い時期からの対応が望ましいのですが、なかなか一筋縄ではいきません。
小児肥満について「どこから肥満というか?」という基準は曖昧ですが、肥満の定義について簡単にまとめました。
日本は「肥満度」という独自の方法を用いて、肥満を定義しています。このため、世界のスタンダードとは大きく異なる基準になってしまっています。
さて、大人で肥満と聞くと「メタボ(メタボリックシンドローム)」を連想する方が多いかもしれません。
実は、小児でもメタボリックシンドロームという概念は存在します。
今回は、小児肥満の原因について少し解説していこうと思います。
原発性肥満と二次性肥満
小児肥満には2種類の肥満があり、
- 原発性肥満(単純性肥満)
- 二次生肥満(症候性肥満)
です。
原発性肥満について
原発性肥満の意味
原発性肥満とは、
- 原因として、明らかな疾病(病気)を確認できない肥満
のことをいいます。
つまり、「〇〇病(例えば甲状腺機能低下症)」という病気があって肥満になったわけではない、という意味です。
小児肥満のほとんどは、この原発性肥満と考えられており、この数十年間で増えた肥満のほとんどがこれです。
なぜ原発性肥満になるか?
原発性肥満になる理由ですが、以前は過食が原因といわれていました。そのほかにも、
- 食生活の変化(高カロリー・高脂肪)
- 運動不足
- 生活習慣の変化
などのため、体のエネルギーの収支がプラスになるため、発症していると考えられています。
原発性肥満の特徴
小児の肥満は起こりやすい時期があり、
- 幼児期
- 思春期
の2つが代表的です。
肥満になると低身長を心配される方もいますが、平均的な身長は、肥満でない方と比較しても変わらないことが分かっています。
小児肥満を気をつけなければいけない理由
小児肥満を気をつけなければいけない理由として、成人期への移行です。
例えば、幼少期に肥満になったとして、この肥満を成人まで持ち越すと、成人になった時点ですでに15年以上も肥満による悪影響を受けています。
肥満である期間が長いほど、健康への悪影響が強くなるため、より早期から気をつける必要があります。
二次性肥満(症候性肥満)
二次性肥満は、
- 特定の病気が原因で、肥満を発症すること
をいいます。「特定の病気」といわれても、なかなかピンとこないかもしれませんが、
- 遺伝
- 視床下部
- 内分泌
の3つがあります。
遺伝性の肥満について
「発症が遺伝と密接に関連している」肥満のことを、「遺伝性肥満」といったりします。
例えば、Prader-Willi症候群という遺伝性疾患があります。この病気の特徴の1つとして、「低身長・肥満」があります。
遺伝子異常による肥満は、乳幼児期に肥満になりやすい傾向があります。
視床下部性肥満について
視床下部は脳の一部ですが、この場所に
- 腫瘍
- 外傷(手術、頭部外傷、X線など)
などがあると、食欲の調節が障害され、過食となり肥満になります。
脳の一部に異常があるため、頭痛、発汗、睡眠障害など、別の症状を伴うことが多いです。
内分泌性肥満について
内分泌性肥満とは、ホルモンの過剰・欠乏によって肥満となります。
ホルモンが過剰に分泌されて肥満となる疾患は、
- クッシング病(ステロイドホルモン)
- インスリノーマ(インスリン)
があります。
一方で、ホルモンが減少することで肥満となる疾患としては、
- 甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモン)
が有名です。
原発性肥満と二次性肥満の区別について
「原発性肥満と二次性肥満の区別はどうしているのだろう?」と疑問に思われた方もいるでしょう。
おおよそ3つの点で区別をしています:
- 成長曲線
- 臨床徴候
- 検査
です。
1. 成長曲線について
成長曲線では、生まれてから現在までの身長・体重の計測値を線で結んでグラフのことをいいます。
例えば、原発性肥満の特徴としては、
- 幼児期〜学童期に肥満を発症
- 身長は平均より高いことが多い
があげられます。
逆に、二次性肥満では、
- 肥満の発症時期が早い(乳幼児期)
- 急激な肥満の進行
- 身長増加速度が不自然に低下している
といった点があげられます。
2. 臨床徴候
原発性肥満の場合ですと、
- 性発育が早い
ことが多いです。
二次性肥満の場合は、
- 性発育が遅い
- 皮膚に異常がある(赤い線、色素沈着など)
- 視力・視野の異常
- 異常な発汗
- 睡眠障害
などの異常を伴っていることもあります。
3. 検査について
検査では、特に血中の様々なホルモンが異常でないかをみることが多いでしょう。
- 甲状腺ホルモン
- 性ホルモン
- ステロイドホルモン
などに異常がないかも非常に参考になります。
原発性肥満であれば、基本的にこれらのホルモンに異常はありません。
まとめ
今回は小児の肥満の分類について、簡単に解説してきました。
原発性肥満では原因となる病気はありません。一方で、二次性肥満では、なにかしらの疾患が原因で肥満となった状態をいいます。
小児肥満のほとんどは原発性肥満ですが、時に基礎疾患があり肥満になってしまうことがあります。
その特徴を知ることで、早めに原因を知るることができるかもしれません。
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