小児の肥満について、これまでに様々な記事を書いてきました。
こどもの肥満は将来の糖尿病や心疾患のリスクになりえるので、早い時期からの対応が望ましいのですが、なかなか一筋縄ではいきません。
小児肥満について「どこから肥満というか?」という基準は曖昧ですが、前回、肥満の定義について簡単にまとめました。
日本は「肥満度」という独自の方法を用いて、肥満を定義しています。このため、世界のスタンダードとは大きく異なる基準になってしまっています。
さて、大人で肥満と聞くと「メタボ(メタボリックシンドローム)」を連想する方が多いかもしれません。
実は、小児でもメタボリックシンドロームという概念は存在するため、今回はこちらを解説していこうと思います。
メタボリックシンドロームとはなにか?
小児のメタボリックシンドロームの意味
「小児からメタボなんであるのですか?」とびっくりされたかもしれません。
あるいは、「小児でメタボと診断する意味はあるのですか?」と疑問に思われてるかもしれません。
まず、成人の肥満についてですが、多くは小児期の肥満が成人にまで移行しています。
また、最近の研究では、小児期の肥満患者から動脈硬化の初期病変が観察されています。
動脈硬化は、将来の心筋梗塞や脳卒中の原因になりえるため、小児の時点から肥満やメタボリックシンドロームを早めに発見し、医学的な介入をする必要があります。
小児のメタボリックシンドロームの基準について
小児のメタボリックシンドロームの診断基準は、成人のそれと類似しています。
- 腹囲
- 血圧
- 血清の脂質
- 空腹時血糖
の4つの項目からなります。成人と小児では基準値が微妙にことなりますので、注意が必要です。
メタボリックシンドロームの各基準について
次に、小児のメタボリックシンドロームの基準について、それぞれの項目をみていきましょう。
腹囲(ウエスト周囲長)
腹囲は内臓脂肪の蓄積を反映する重要な指標です。
計測は難しくないので、学校保健においても有用な指標と考えられています。
小児の場合:
- 中学生:> 80 cm
- 小学生:> 75 cm
- 腹囲 ÷ 身長:> 0.5
の場合、内臓脂肪の蓄積を疑います。
血圧
肥満と高血圧は密接に関わっています。
実は、小児の高血圧の基準値は小児腎臓学会によって、性別・年齢別に細かく分けられています。
しかし、通常の小児科外来でこれらの基準を参照にするのは、やや煩雑であるという理由から、血圧の基準値は
- 収縮期血圧:125 mmHg
- 拡張期血圧:75 mmHg
とされています。
血清脂質
血清脂質の基準は;
- 中性脂肪:120 mg/dL 以上
- HDL-コレステロール:40 mg/dL未満
が基準となっています。
空腹時血糖
内臓脂肪が蓄積すると、血糖値を下げるために放出されるインスリンが効きづらくなる「インスリン抵抗性」という状態になります。
このため、血糖値が高くなったり、血中のインスリンの量が増えたりします。
小児では、
- 空腹時血糖:100 mg/dL以上
- 血清インスリン(IRI):15 μU/mL
を異常値としています。
まとめ
今回は小児のメタボリックシンドロームについて、簡単に解説してきました。
もちろん保護者の方々が、これらを記憶する必要はありませんが、学校の健診でひっかかってくることがあります(夏休みなどによく外来で受診されます)。
「小児にもメタボリックシンドロームの基準がある」と、頭の片隅に入れておくだけで十分と思います。
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