前回まで、メタ解析の考え方、手法などを8回に分けて説明してきました。
こちらの論文を用いて、メタ解析を実際に行ってきました。
こちらが前回の記事でして、固定効果とランダム効果を実際に行いました。
こちらの解析結果では異質性が非常に高く、おそらく第3の因子(Effect modifier)がワクチンの予防効果を修飾していると考えられます。
今回は、異質性を考慮した解析について説明していこうと思います。
異質性の評価をする
今回は「緯度(latitude)」による異質性を考慮してみようと思います。
まずは研究が行われた国の緯度によってワクチンの予防効果が異なるか見てみましょう。
緯度を低い順に並べてみると、
- 緯度の低い国は治療効果が低い
- 緯度の高い国は治療効果が高い
傾向にありそうに読み取れます。
サブグループで解析をする
緯度が異質性のソースになっていそうなので、緯度の低いグループと高いグループに分けて解析をしてしまえばいいのです。
ここでデータを
- 緯度が35度以上
- 緯度が35度未満
の2つのグループにわけてランダム効果を用いてみます。
緯度が35度以上
緯度が35度以上の結果はこちらになります。
予測した通り、全体での解析結果と比較して治療効果は大きく、
- RR 0.30 (95%CI, 0.20-0.44)
となっています。
緯度が35度未満
こちらが35度未満での結果となります。
治療効果は緯度の低い地域では低く、
- RR 0.76 (95%CI, 0.58-1.00)
となっています。
緯度の高い地域 vs 低い地域で治療効果に差があるか検討をする
- 35度以上:RR 0.30 (95%CI, 0.20-0.44)
- 35度未満:RR 0.76 (95%CI, 0.58-1.00)
と2つの結果を出しました。
この2つのグループの結果が統計学的に異なるか(異質性といえるか)を解析してみましょう。
緯度が高い地域(higherlat)のほうが、統計学的に優位に予防効果が大きいという結果でした(P = 0.002)
メタ回帰分析で異質性を評価する
- 低い緯度の国々のほうが衛生環境が悪いことが多い
- 年度が早いほうが、衛生環境が悪い
といったことが予測できるため、これら2つがワクチンの結核予防効果にどのように影響を与えるのか、メタ回帰分析でみてみましょう。
- 緯度が1度あがると、治療効果(RR)は exp(-0.027) = 0.97倍に下がる
- 研究年が1年遅れると、治療効果は exp(7.82) = 0.94倍に下がる
といえます(統計学的な有意差はありませんが)。
つまり、この結果から、
- 緯度が高いほど、予防効果が大きい
- 研究した年度が遅いほど、予防効果が大きい
といえます。
Cumulative meta-analysisについて
年度によって治療効果が異なりそうな時は、年度を対象としてCumulative meta-anamysis(累積メタ解析)をしてみてもよいでしょう。
出版年度が低いほど、予防効果が大きく、年度を経るにしたがって徐々に平均的な効果に回帰しているのがわかります(0.20 —> 0.65)
影響力の大きな研究を探す
メタ解析は様々な研究結果を統合するため、全体の結果に対して
- 影響力の大きな研究
- 影響力の少ない研究
が混在します。これを探るには、metaninfというコマンドを使えばよいです。
こちらの結果をみると、
- TB prevention trialが非常に予防効果が大きい
- SteinやHartは、予防効果が小さい
傾向にあるのがわかります。
影響力の強い研究を除外して、再度メタ解析をしてみても良いでしょう。
まとめ
今回は、Stataを使いながら、メタ解析の異質性の評価をしてみました。
- サブグループ解析
- メタ回帰分析
- 累積メタ解析
- 影響力の大きな研究を探る方法
などを簡潔に行ってみました。
次回はこのシリーズの最終回になります。
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