- 『肝炎ウイルスはA〜E型の5種類あります』
と保護者の方々に説明すると驚かれることがあります。世間一般に知られている肝炎ウイルスは、B型肝炎とC型肝炎です。もちろん、A型もD型もE型もあります。
前回はD型肝炎の診断と治療について、簡単に解説してきました。。
D型肝炎はB型肝炎ウイルスと共感染するため、比較的珍しいですが、日本はB型肝炎に罹患率が多いため、決してあなどれません。
あまり聞きなれないかもしれませんが、今回はE型肝炎について説明していきます。
E型肝炎ウイルスについて
E型肝炎はその名の通り「E型肝炎ウイルスに感染して生じる肝炎」です。
E型肝炎ウイルスの特徴
E型肝炎ウイルスは1本鎖RNAウイルスで、長さは32-34 nmです。
A型肝炎ウイルスと一緒で、腸から感染します(糞口感染)。
E型肝炎ウイルスにかかると急性肝炎を起こしますが、(B型やC型肝炎ウイルスのように)慢性化はしません。
E型肝炎はどこで流行しているか?
発症率の高い地域として報告があるのは;
- 中央・東南アジア
- 中国
- 北アフリカ
- メキシコ
などがあげられます。
これらの地域では、水が汚染されていて感染が広がっている可能性があります。
また、水質以外にも食事を介して感染することもあります。
例えば、日本でもE型肝炎の発症の報告は多数あり、
- イノシシの生レバー摂取後
- 豚のレバー摂取後(加熱不十分だった)
- 生のシカ肉摂取後
などが生肉・生レバーからの感染が具体例としてあります。
感染が多い年齢層は15〜40歳になります。
E型肝炎の臨床経過について
急性E型肝炎では、腹痛・発熱・黄疸・嘔吐といった肝炎の典型的な症状がでます。
一般的な肝炎の症状はこちらで解説しています。
潜伏期間といい、感染から症状が出るまでの期間は2〜8週間です。
(平均40日が潜伏期間)
E型肝炎ウイルスに感染経路について
E型肝炎ウイルスは、A型肝炎と一緒で糞口感染します。
感染した動物やヒトの糞によって汚染された水や食品から、腸の粘膜を介してヒトへ感染します。
このため、途上国など水質の悪い地域に行くケースは注意が必要です。
また、生肉・生レバーも感染のリスクはありますので、国内でも安心はできません。
重症化することもあります
E型肝炎になっても、ほとんどのケースでは完全に回復して慢性化しません。
その一方で、重症化して死亡する可能性は4%以下といわれています。
特に、妊娠女性ではE型肝炎は重症化しやすく、致死率は10%〜30%といわれています。
検査について
症状と抗体が連動していることが多いです。
肝炎の症状が出ている時に、IgMやIgGは上昇してきます。
E型肝炎の感染予防について
E型肝炎ウイルスのワクチンはありますが、認可されているのは中国のみです。
ワクチン以外で感染予防ですと、
- 食品(特に生肉)・水質に気をつける
- 手洗いをしっかりする
(特にトイレ後、食事の前、料理の前)
があげられます。
まとめ
E型肝炎について簡単に説明してきました。
肝炎についてシリーズ形式で解説してきましたが、今回で終了です。
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