前回、出版バイアスの統計学的な評価方法である、
- Begg’s test(Begg検定)
- Egger’s test(Egger検定)
について、さらに
- Trim and Fill method
を説明してきました。
今回は、Dose-response メタ解析について、簡単に説明していければと思います。
Dose-response メタ解析について
Dose-response meta-analysis(メタ解析)は、その名の通り、「治療・暴露因子の用量(dose)」と「アウトカム(反応:response)」をメタ解析で行う手法のことをいいます。
Dose-response メタ解析を行う理由は様々ですが、研究によって治療や暴露の量が異なることがあるからです。
この問題はRCTでも観察研究でも起こりえます。
Dose-response meta-analysis(メタ解析)の目的について
Dose-response メタ解析では、治療や暴露因子のレベル(量)の違いによって、どのようにアウトカムが変化するのかを見ます。
治療や暴露の量が変化すると、アウトカムの頻度が
- 減るのか
- 増えるのか
- 変わらないのか
といったトレンドを見ます。
Dose-response meta-analysis(メタ解析)の方法について
大まかに分けて、Dose-response メタ解析では2つの方法があり、
- Two stage approach
- One stage approach
に分かれています。
この方法について、実例を用いながら説明していきましょう。
Two stage approachについて
Two stage approachは、日本語で直訳すると二段階法になります。
解析者が踏む段階として;
- それぞれの研究で用量反応曲線を予測する
- 研究間での結果を回帰分析で統合する
という手順になります。
アウトカムは二値変数(binary outcome)でも、連続変数(continuous outcome)でも行えます。
Adiponectinと2型糖尿病の例
こちらの研究では、Adiponectinが2型糖尿病のリスクを変化させるか見ています。
この場合;
- 用量:adiponectin
- 反応:2型糖尿病のRisk
となります。
それぞれの研究での用量-反応曲線をみて統合する
こちらは論文中に掲載されているfigureですが、個々の研究結果の用量-反応曲線を書いています。
そして、最終的にこれらの結果を回帰分析で統合します。
こちらの記載から;
- 用量:Adiponectionのレベルは 1-log μg/mL上昇すると
- 反応:2型糖尿病のリスクは0.72倍になる
と結論づけています。
One stage approachについて
One stage approach は
- 個々の研究で用量反応曲線を予測する
- 研究間での結果を回帰分析で平均化する
を同時に行います。
「そんなこと可能でしょうか?」と思われた方がいるかもしれません。
混合効果モデル(Mixed effect model)という手法を使えば可能です。
One-stage approachの例
こちらの研究では、
- 用量:コーヒーの消費量(杯/日)
- 反応:致死率
をみています。
One stage approachですので、先ほどのように個々の結果はみず、1つの統計モデルで一度に対処してしまいます。
上の実線はone stage、下の点線はtwo stage approachの結果になります。
コーヒーの摂取量が増えると、死亡率が下がっているのがよくわかります。
特に、1日2〜3杯くらいまでは、死亡率を大きく下げてくれるのがよく分かります。
まとめ
今回はDose-response meta-analysis(メタ解析)の統計学的な評価方法について、簡単に説明してきました。
次回は、Stataを使って、実際にメタ解析をしてみようと思います。
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