私が小児科医として研修を始めた頃に
- 『赤ちゃんの血液型は変わるからね〜』
- 『小さい子供の血液型は変わることがあるから、急いで検査しなくていいんじゃないの?』
- 『乳幼児の血液型検査の結果は変わることがあるのを、親御さんにきちんと説明しておいてね』
などなど、先輩医師から指導を受けることがありました。
正直、「え、血液型は遺伝的に決まっているのに、変わるってどういうこと!?」と内心思い、小児科の教科書を見返した覚えがあります。
結論からいうと、血液型が変わるというより、乳幼児の血液型は様々な理由で間違った検査結果が出てしまう、という意味のようでした。(疫学者らしく疫学用語でいうと、誤分類(misclassification)ですね)
今回はこの「血液型が変わる」という現象を詳しく説明してみようと思います。
血液型が知りたい理由
『血液型が知りたいです』
と受診されることがあります。知りたい理由は様々ですが、
- 保育園・幼稚園・学校の提出書類に記載欄がある
- 万が一に備えたい
といった理由が多いです。
血液型は保育園などで必要な医療情報ではありません。
自己申告の血液型は間違っていることがあるため、万が一輸血が必要なときは血液型検査をしてから輸血を行います。
赤ちゃんの血液型が変わるって本当ですか?
『赤ちゃんの血液型って変わるのですか?』と聞かれることがあります。研修医の先生にそう聞かれることもあります。
私も小児科研修を始めたばかりの頃に、指導医から
『赤ちゃんの血液型は変わるからね〜。』と言われ、疑問に思っていたことがあります。
血液型は本来は生まれる前に決まっています。
ですから、『血液型が変わる』というのは少し不正確です。
もう少し正確にいうと、様々な理由で、血液型が間違って判断されてしまうケースがある、ということでしょう。
血液型の分類について
血液型は赤血球の抗原で分類されている
血液型は赤血球の表面についている抗原に基づいて行われていて、
- A型にはA抗原
- B型にはB抗原
- AB型にはA抗原とB抗原
- O型には抗原なし
となっています。
A型はB抗体、B型はA抗体…
抗体は異物を認識する役割があるので、抗原とは逆の組み合わせになります。
- A型にはB抗体
- B型にはA抗体
- AB型には抗体なし
- O型にはA抗体とB抗体
となっています。
血液型は抗原と抗体検査から判断しています
血液型は抗原と抗体によって分類されているため、抗原・抗体それぞれを検査で確認します。
- 抗原の検査をオモテ試験
- 抗体の検査をウラ試験
と呼んでいます。
抗原の出現時期
抗原は早い場合には胎児期から出現していますが、その量は少ないです。
出生してから徐々に量が増えていき、3歳くらいで成人と同じレベルになります。
オモテ試験で抗原量が少ないため、特に新生児や乳児では、O型でないのにO型と間違って判断してしまうことがあります。
抗体の出現時期
抗体は生後3〜6ヶ月になると出現してきます。
抗原より遅く出現するのは、抗体を作る免疫細胞が最初は未熟で抗体を産生できないためです。
生後3〜6ヶ月に抗体が出現し、その後は徐々に量が増えてきます。
このため、抗体が安定して産生されるまでは、ウラ試験でも間違って判定されることがあります。
まとめ
血液型は赤血球の表面にある抗原や血液中の抗体を利用して分類しています。
新生児や乳児は抗原や抗体の量が少なく、血液型が間違って分類されてしまうことがあります。