滲出性中耳炎のポイント
まずは、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎のポイントです;
- 滲出性中耳炎は『耳の中に水が溜まっている状態』です
- 自然軽快が多いので、無治療でいいこともあります
- 何か薬を飲んで、劇的に良くなるわけではありません
- 聴力障害や言語発達の遅れがないか、慎重にみています
滲出性中耳炎って何ですか?
滲出性中耳炎 は、耳の中に液体が溜まってしまう病気です。
耳に液体が溜まる病気を『中耳炎』といいますが;
- 感染を伴う場合は『急性中耳炎』
- 感染を伴わない時は『滲出性中耳炎』
と分けて考えています。
滲出性中耳炎が起こる理由
滲出性中耳炎は、のどと耳をつなぐ管(耳管)が上手く機能しないと起こります。
中耳に液体が溜まっても、うまく排出できないと滲出性中耳炎になってしまうことがあります。
滲出性中耳炎の原因について
滲出性中耳炎は、耳の中(中耳)に水が溜まることで起こります;
- 急性中耳炎
- 上気道炎(鼻かぜ)や扁桃腺炎(のどのかぜ)
- 副鼻腔炎
を起こした時に、中耳に液体が溜まることがあります。
また、生まれつき口唇口蓋裂があるお子さんや、ダウン症候群のお子さんも滲出性中耳炎を起こしやすいです。
滲出性中耳炎の症状
耳の中に液体が溜まっているため;
- テレビの音を大きくする
- いつも声が大きい
- 呼んでも返事をしない
- 耳を頻繁にさわる
といった症状が多いです。
乳児の場合、診察で鼓膜を確認するまで気づかれないことも多いです。
滲出性中耳炎の診断
耳鏡で鼓膜を観察すし、中耳に液体が溜まっていたら診断します。
インピーダンス・オージオメトリーという機械でも判断できます。
滲出性中耳炎の治療について
滲出性中耳炎の治療ですが、大きく3つの方針があります;
- 自然軽快を待つ(特別な治療をしない)
- 薬物治療
- 鼓膜にチューブを入れる
滲出性中耳炎は放置していても治ることが多いです
滲出性中耳炎は特別な治療をしなくても、6〜8週間以内に治ることもあり;
- 3ヶ月 56%
- 6ヶ月 72%
- 9ヶ月 81%
- 12ヶ月 87%
が自然軽快するというデータがあります。
滲出性中耳炎での薬物治療は科学的根拠が少ない
滲出性中耳炎の治療ですが、現時点では;
- 抗ヒスタミン薬:ペリアクチン、ポララミン
- 抗菌薬
- ステロイド
が使用されていますが、これらの治療は科学的な根拠の乏しいです。
抗ヒスタミン薬について
2011年にシステマティック・レビューといわれる研究がされ、抗ヒスタミン薬は滲出性中耳炎に効かないことが分かっています。
抗ヒスタミン薬は副作用もでやすいため、内服は避けた方がよいと考えています。
*詳細は下のリンク:
抗菌薬について
抗菌薬を投与すると、滲出性中耳炎が早く軽快するかもしれない、というデータはあります。
しかし、合併症である聴力低下などの頻度は減らさないことが分かっています。
また、抗菌薬を内服することで、下痢、薬疹、嘔吐などを起こすことがありますので、安易に使用しないほうがよいでしょう。
ステロイドについて
ステロイドは内服と点鼻の2種類がありますが、いずれもオススメしません。 滲出性中耳炎の合併症をステロイドは減らすことができないことが、メタ解析という研究手法で分かっています。
また、ステロイド点鼻薬も同じで、もともとアレルギー性鼻炎(花粉症)のある人にしか有効性はありません。
鼓膜チューブの適応について
滲出性中耳炎の診断しても特に本人に症状がなければ数ヶ月は特に治療をせず、鼓膜の診察や耳の聞こえの評価をします。
(耳の聞こえを定期的に評価する必要はあります)
次に、滲出性中耳炎が3ヶ月以上続く場合には、言葉の発達、学習障害、聴力低下がないかを聴力検査を行います。
もし、これらの症状が表れた場合は、鼓膜換気チューブ挿入術が必要となります。
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