感染症

夏かぜについて 〜手足口病とヘルパンギーナ〜

今回は夏かぜで有名な手足口病とヘルパンギーナについて解説します。
まずは手足口病から見ていきましょう。

Dr.KID
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夏風邪と言えば、手足口病とヘルパンギーナ。

手足口病のまとめ

  • 原因は、エンテロウイルス・コクサッキーウイルスの感染です
  • 水疱が手・足・口とお尻によく出ます
  • ウイルス感染のため、特効薬はありません

 

手足口病の原因

手足口病の原因はウイルス感染です。
原因ウイルスは複数あり、代表的なものは:

  • エンテロウイルス (68〜71型)
  • エコーウイルス
  • A or B群コクサッキーウイルス(16型)

です。
ウイルスに感染する経路は、唾液・鼻水・糞便などを通した飛沫感染・接触感染がほとんどです。

手足口病の流行

毎年夏に、幼稚園や保育園に通う乳幼児で集団発生しています。
1歳頃に好発し、5歳以下が90%です。

ですが、学童や大人にも感染することはあります。
(大人は喉の痛みで治まることが多いですが、手足に発疹が出ることもあります)

 

手足口病の症状

流行しているウイルスに感染して手足口病の症状が出るまでの期間(潜伏期間)は数日です。

2mm〜5mm程度の小さな水疱や円形の紅斑が体中に出てきます。
手のひら、指間、足底、お尻に出ることが多いです。
(『手・足・口』病というわりに、『お尻』にも発疹が多いです)

口腔内にも特徴的な水疱やアフタが出現するため、診察で手足と喉をみれば診断できます。
喉の痛みのため、食欲が低下していることが多いです。

発熱は多くはありませんが、30%程度で認めます。
高熱になるケースは多くないです

 

手足口病の診断

手足口病は、医師が診察して決める臨床診断で十分です。

理論上はPCRというウイルスの遺伝子増幅検査で検出できますが、大きな専門病院でしか行えない検査です。
街のクリニックではできる施設はないでしょう。

 

 ヘルパンギーナのポイント

手足口病の次は、もう1つの夏風邪、ヘルパンギーナをみていきましょう。
ヘルパンギーナは;

  • エンテロウイルスの感染で、口内炎と高熱がでます
  • ウイルス感染ですので特効薬はありません
  • 解熱して、食事がとれれば登園・登校は可能です

ヘルパンギーナの原因について

まずはヘルパンギーナの原因について解説します。

『ヘルパンギーナ』という名前の由来

『ヘルパンギーナ』 の語源はドイツ語です。
『ヘルペス (水疱) 』と『アンギーナ (喉の炎症) 』を合わせて『ヘルパンギーナ』という名前が出来上がったのです。
この名前の通り、 喉に炎症があり、水疱の病変が見えます。

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最近は「ヘルパン」と略す保護者もいて、ちょっと驚きました。

ヘルパンギーナの原因ウイルス

ヘルパンギーナは夏に流行し;

  • エンテロウイルス(A群 or B群コクサッキーウイルス)
  • エコーウイルス

といったウイルス感染が原因です。

ヘルパンギーナの症状

ヘルパンギーナは、流行しているウイルスに感染して症状が出るまでの期間は数日〜1週間程度です。

 

上の写真のように、口の中の天井(軟口蓋,口蓋弓)に2mm〜4mmの発疹が出現します。
このため、のどに強い痛みを伴うことが多いです。
のどの痛みから、哺乳量や食事・水分の摂取量が低下していることが多いです。

39℃以上の高熱が2日〜4日くらい続く場合もあります。  

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見るからに喉が痛そうですね。

ヘルパンギーナの診断

患者さんの喉や全身を診察して診断します。
PCRや血液検査でも検査可能ですが、クリニックレベルでは行えません。 。

手足口病やヘルパンギーナの治療

手足口病やヘルパンギーナは夏風邪の一種と考えましょう。
つまり、ウイルス感染のため、特効薬はありませんし、特別な治療は必要ありません。

抗生物質を希望される方がいますが、 ウイルス感染には無効ですので、内服するメリットはありません。 

手足口病もヘルパンギーナも、長くても1週間くらいで治癒します。 

こまめな水分摂取で脱水を予防するようにしましょう。
発熱や喉の痛みは解熱鎮痛薬で対処できます。

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安静と休息、適切な栄養摂取、痛みや熱が辛ければ解熱鎮痛薬。

喉の痛みが強いときの対処法

喉が痛いと水分摂取も辛くなってきます。
とはいえ、夏場は脱水になりやすいので、最低限の水分・塩分・糖分は摂取しましょう。
OS-1やアクアライトなど、経口補水液を使用すると良いでしょう。

冷たいものが痛みを和らげます

飲み物を冷たくすると、痛みが軽減して、飲みやすくなります。
冷たい飲み物だと、喉の感覚が少し麻痺してくれて、痛みが軽減するためです。
もし、飲み物も辛ければ、アイスクリームなど冷たいもので、糖分・塩分を補給しても良いでしょう。

解熱鎮痛薬も積極的に使いましょう

カロナール・コカールなど、アセトアミノフェンを含む解熱剤を処方してもらっても良いでしょう。
解熱剤には鎮痛作用もあり、喉の痛みが軽減します。
水分摂取をする30〜60分くらい前に解熱剤を使用すると、痛みが軽減して、飲み物を摂ってくれることがあります。

コカールなどの解熱剤は、鎮痛剤(痛み止め)としても使えるので、熱がなくても使用できます。

◎ 市販薬でもアセトアミノフェンを使った解熱剤はありますので、こちらを使用されてもよいでしょう。

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ABOUT ME
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。