小児科

ホクナリン・ツロブテロール・セキナリンテープは咳止めではない

  • 「咳止めのテープをください」

と外来でお願いされることが多々あります。また、今回のかぜでは未受診なのにすでにホクナリンテープ(ツロブテロール・セキナリン)が貼られているケースも多々あります。

ひょっとしたらこれらテープ類は咳止めと勘違いされていたり、さらに咳止めとしての効果がなく副作用がある点をご存知ない方もいるでしょう。

そこで、本記事では下記の内容を解説します。

本記事の内容

  1. ホクナリンテープのポイント
  2. テープ類は咳止めではありませんよ
  3. テープ類は気管支拡張薬ですよ
  4. 即効性はありません
  5. 副作用もあります

といった点を1つずつ解説します。簡単な薬の作用機序や適応、エビデンス(科学的根拠)も交えながら、わかりやすく説明できればと思います。

Dr.KID
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実は知られていない、テープの有効性・副作用について、簡単に解説します。

 ホクナリンテープのポイント

かぜや気管支炎でよく処方されるテープですが、

  • ホクナリンテープ®︎
  • ツロブテロールテープ®︎
  • セキナリンテープ®︎

が代表的と思います。これらテープ類の要点ですが、

  • 咳止めではなく、気管支拡張薬
  • 薬に即効性はなく、効果が出るまで6時間ほど必要
  • 動機・不整脈・手足の震えといった副作用がある

の3点は知っておいて良いでしょう。

ここからは、それぞれを詳しく説明していきます。

Dr.KID
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薬には、必ずメリットとデメリットがあります。両面を把握するようにしましょう。

実は「ホクナリンテープ≠咳止め」

「ホクナリンテープには咳止めの効果がある」と本気で信じて疑わない方が沢山い流のですが、実は、本当に咳が止まるのは、ほんの一部のお子さんです(気管支喘息の小児のみ)。

 ほとんどの小児で咳止めの効果がない理由

例えば、気管支喘息のある患者さんにホクナリンテープを使用した場合、喘息によって狭くなった空気の通り道が広がるため、呼吸が楽になり咳が止まることはあります。

ですが、外来に受診されるお子さんのうち、気管支喘息があるケースは少ないです。
このような場合、咳の原因は喘息ではなく風邪であるため、テープを使用したところで軽快することはまずマイでしょう。

この貼り薬に咳止めとしての効果は、そもそもないのです。

Dr.KID
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テープ類は咳止めではありませんよ。

 簡便さに流されないで

貼付薬(テープ)は胸に貼るだけという簡便さから、保護者の方から絶大な人気があるのは理解できます。

さらに「咳止め」と勘違いして、風邪とひいた時のためにストックしているご家庭も見かけます。

その反面、十分に薬の効果を説明されず、何となく処方されて、何となく使用されています。

 

Dr.KID
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便利な薬でも、有効性がはっきりせず、副作用がある点は知っておいても良いでしょう。

ホクナリン・ツロブテロール・セキナリンテープは気管支拡張薬

 ホクナリンテープ・ツロブテロールテープ・セキナリンテープの裏には”ツロブテロールという成分が塗ってあります。
この”ツロブテロール“は、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激します。
この受容体が薬の成分で刺激されると、気管支の平滑筋が弛緩して、気管支が拡張します
単に気管支を拡張させるだけの薬なので、咳止めの効果は一切ありません

臨床研究で咳止めの効果がないのは既に証明されている

  • 『でもKID先生、この薬は本当によく処方されてるし、咳止めの効果はないのですか?』

と疑問に思われる保護者の方も数多くいるでしょう。普段から愛用していると、なかなか有効性に疑問を持ちづらいかもしれません。そこで、過去の研究結果を見てみましょう。

すでに過去に複数の施設で研究は行われ、
  • 『ツロブテロール・ホクナリン・セキナリンテープは、咳止めの効果はない』

と科学的に証明されています(以下の論文)

研究内容の解説

簡単にですが、この研究内容を説明します。
この研究では、「気管支喘息のない小児」を対象にして、ホクナリンテープを使用した子と使用していない子を比較しています。
結果、「ホクナリンテープを使用した子は、使用していない子と比較しても、咳の症状は変わらなかった」と結論づけています。
つまり、ホクナリンテープを使用しても、咳の症状は改善しないのです。

気管支喘息のある子には効果を認めることも

この研究では気管支喘息のある小児や、聴診で喘鳴を認めたケースは研究の対象外でした。
一般的に、喘息を疑われている子供への使用は有効ですので、使用されてもよいでしょう。
ここで強調したいのは、ホクナリンテープ・ツロブテロールテープを「使いやすい咳止め」として、漫然と使用するのは避けた方がいい、という点です。

 

ホクナリンテープは貼ってもすぐに効かない

ホクナリンテープは、皮膚に貼っでもすぐに効果はでません。
テープに付いている薬の成分が皮膚から吸収されて、気管支に届くまで時間がかかるからです。
テープの効果が出るまでに、4時間〜6時間はかかります。
このため、ゼーゼーと喘鳴が悪化してからでは、あまり効果は期待できません。

 即効性はありませんが、長時間効いてくれます

即効性がないのは欠点でもあり、長所でもあります。
テープの効果はゆっくりと長く持続するため、1日に1回だけ貼付すればOKです。
お薬を頻回に飲ませるのと比べると、とても簡便に使用できるのは、テープの利点でしょう。

 使うなら早めに使用 

気管支喘息のお子さんへは、鼻水や咳など感冒症状が出現して、ゼーゼーという喘鳴が懸念される場合に、早めに使用してもらいます。
悪化してからでは遅いので、早めに使用するとよいでしょう。
特に、喘息の悪化が不安な夜などは、あらかじめ寝る前に貼っておくとよいでしょう。
Dr.KID
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使うべきタイミングもありますので、担当医ともよく相談しておきましょう。

ホクナリンテープ・ツロブテロールテープの医学的な適応

これまで説明してきたように、ツロブテロールテープは、風邪には医学的な適用はないでしょう。
使用したほうが良いのは、聴診器で胸の音を聴いて、ゼーゼーと喘鳴の音が聞こえているときでしょう。
疾患としては:
  1. 気管支喘息がある
  2. 気管支炎で喘鳴がひどい
場合に、使用されるとよいと思います。
気管支喘息も気管支炎も、気管支という空気の細い通り道が、炎症や分泌物で細くなっている状態で、気管支拡張薬を使う事で、症状の改善が見込めるからです。
(*ただし、気管支炎への有効性は疑問視されています)
 

ホクナリン・ツロブテロールテープは副作用がある

ホクナリン・ツロブテロール・セキナリンテープは体に貼るだけの薬で簡便であり、副作用はないと考えている保護者が多いです。

しかし、現実には副作用がいくつかあります。代表的なものは:

  • 頻脈・不整脈
  • 手足の震え
  • 低カリウム血症
  • 筋力低下

が代表的です。

また、手足の震えは高頻度に出現した研究結果もあり、最大で3割ほどで起きていたという報告もあります。 

ただの風邪で安易に使用したはずの薬が、不整脈や手足の震えといった副作用が結果として出てしまうのは、割に合わないと思います。

Dr.KID
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意外と副作用が多い薬なのかもしれません。

 すべての薬にはメリット・デメリットがあります

全ての薬には、必ず副作用があります。
大事なことは、薬のメリットとデメリットを天秤にかけ、必要なお薬を、必要に応じて使用することです。

 

まとめ

今回はよく処方されているテープ類について、まとめてみました。

  • 咳止めでなく、気管支拡張薬
  • 風邪の咳には無効
  • 適応例は気管支喘息のあるお子さん
  • 不整脈や手足の震え、といった副作用がある

という点だけでも覚えておくと良いでしょう。

適切な薬の選択と使用は、お子さんの健康を守るのにとても役に立ちます。
よく処方される薬の知識を知ることで、賢い薬の選択に繋がります。

Dr.KID
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よく処方される薬こそ、詳しく知っていると良いかもしれませんね。

 

◎ 痰がらみの咳は、多くは鼻水が喉にたれる「後鼻漏」で起こります。最近はクリニックと同じような鼻吸い機が、わりと廉価で売られだしています。

  

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。