小児の咳止めととして時に処方されたり、2018年までは市販薬としても発売されていました。
2019年度より小児への規制が厳しくなり、今後、小児への使用が急速に減っていくと予測しています。
一方で、授乳中の母に咳止めや痛み止めとして処方され、母から子供へコデインやオキシコドンが移行する可能性もありえます。
ここで、授乳中にオキシコドンやコデインといった麻薬性の鎮痛薬や鎮咳薬が子供にどの程度影響するのか、しっかりと根拠を明確にする必要があります。
今回はこちらの研究をピックアップしました。
こちらの研究では、実際にコデインやオキシコドンを内服した母親の授乳中の子供が、どの程度、これらの薬による副作用を認めたのかみています。
研究の方法
今回の観察研究は、
- 2004〜2008年
- カナダのトロント小児病院で出産した母子
- 出産後の疼痛管理目的で、オキシコドン、コデイン、アセトアミノフェンが処方
- そのほかの精神科系の薬を使用していない(ベンゾジアゼピンなど)
といった母親を対象にしています。
母子の背景情報として、
- 母の年齢
- 使用された薬の用量と期間
- 出産数、週数、体重
- 子供の性別、出生体重、先天性疾患
などを聴取しています。
アウトカム
研究のアウトカムとして、
- 中枢神経系の副作用:傾眠傾向(母乳を欲しがってなかなか起きない)、易刺激性、
を中心にみています。
研究の結果と考察
合計で533名の母子が研究の対象となりました。内訳として、
- オキシコドン使用:139名
- コデイン使用:210名
- アセトアミノフェン使用:184名
でした。
それぞれのグループを比較しましたが、母体年齢、人種、出生児体重は統計学的な有意差がありませんでした。
オキシコドンやコデインは、帝王切開後、歯科治療後などに処方されやすい傾向がありました。
乳児への副作用の報告について
オキシコドン | コデイン | アセトアミノフェン | |
サンプル数 | 139 | 210 | 184 |
中枢神経系 (副作用) |
28 (20.1%) |
35 (16.6%) |
1 (0.5%) |
著者らの報告によると、オキシコドンを使用していたグループはアセトアミノフェンのグループと比較して、統計学的な有意差を認めました。
一方で、オキシコドンはコデインと比較しても統計学的な有意差はありません。
例えばアセトアミノフェンをreferenceにして、オキシコドンと比較してみましょう。
アセトアミノフェンと比較して、オキシコドンは乳児への副作用のリスクが37.1倍高くなる(5.1〜269.1倍)と推定できます。
さらに、アセトアミノフェンとコデインを比較してみましょう。
アセトアミノフェンと比較して、コデインは副作用のリスクが30.7倍でした(4.2〜221.6倍)。
母の副作用について
一方、母の副作用についてですが、
オキシコドン | コデイン | |
サンプル数 | 139 | 139 |
眠気・鎮静 | 92 (66.2%) | 21 (15.1%) |
吐き気 | 19 (13.7%) | 4 (2.9%) |
便秘 | 23 (16.5%) | 13 (9.4%) |
となっています。
それなりに高い頻度で副作用が起こっているようにもみえますが、アセトアミノフェングループの頻度の掲載がなく、なんとも言えない結果です。
論文全体の感想
最初に私が提示したテーブルが、著者らが最もいいたかったことでしょうが、このテーブルが論文中に掲載されていなかった点が少し残念でした。
(他のあまり有益な情報のないテーブルはなぜかたくさん掲載されている)
とはいえ、コデインやオキシコドンが授乳中の新生児・乳児にとって悪影響がありそうな結果となっています。
解析方法としても、いわゆる正常にもっとも近いグループ(アセトアミノフェン)をreferenceにしていなかったりと、やや疑問の残る解析内容が多かったです。
まとめ
今回の研究から、授乳中の方もコデインの使用は気をつけたほうが良い結果となっています。
小児への使用は徐々に厳しくなってきていますが、母の母乳から新生児・乳児に移行してしまうことがあるので、かぜで受診した際などに母親もコデイン入りの咳止めが処方されていないかは気をつけてみると良いでしょう。