- 「咳止めを処方されたのですが、小さな子供への副作用が心配です」
- 「かぜで処方される咳止めに、副作用はあるのですか?」
など、咳止めは処方されたものの、副作用が気になる保護者の方は多いと思います。
今回はこちらのご質問に応えるべく、こちらの論文をピックアップしました。
アメリカにおいて、デキストロメトルファン(メジコン®︎など)に関連した副作用の報告をまとめた研究になります。
実際に、どのような状況下で、どのような副作用が起きたのかが分かります。
研究の背景
市販薬(OTC薬)はアメリカにおいて小児で最もよく使用するされる薬で、
- 過量投与
- 救急外来の受診
- 中毒センターへの相談
などとも関連しています。
小児はかぜを引いた際に咳をよくするため、咳を抑える薬としてデキストロメトルファン(メジコン®︎)がよく処方されます。
また、OTC薬にも同じ成分が入っており、アメリカでは小児で最もよく使用される薬の1つです。
小児へのデキストロメトルファンの使用に関する現状
アメリカにおいては、FDAは2007年頃から4歳未満へ使用しないように推奨したり、アメリカ小児科学会(AAP)も使用を推奨しない旨を発表しています。
この影響を受けて、製薬会社は任意で4歳未満への使用を警告する文章を入れるようになっています。
そういっても、アメリカ国内ではかぜを引いた際にドラッグストアなどで小児の風邪薬を購入する親は多いですし、市販薬からデキストロメトルファンを内服する小児は依然として多いです。
咳止めとして処方されるデキストロメトルファンですが、無害な薬であれば特に問題ないのですが、残念ながら副作用のある薬です。
また、特にOTC薬などでは、添付文書をきちんと読まずに過量投与されたり、保護者の監視が甘くて子供が間違って大量に飲んでしまうケースもあり、重大な副作用を認めることもあります。
今回の研究の目的
これまで、デキストロメトルファン(メジコン®︎)に関連した副作用は主にケースレポートや少数のケースシリーズがほとんどで、実際にどの年齢層で、どのような副作用が報告されているかが、やや不明瞭でした。
このため、今回の研究ではデキストロメトルファンの安全性や副作用について、アメリカの中毒センターの副作用報告システムのデータを用いて確認しています。
研究の方法
今回の研究は、アメリカの中毒データシステムにあるデータを使用して、
- 12歳以下の小児
- デキストロメトルファンを内服
- デキストロメトルファンに関連した副作用がある
を対象に解析を行っています。
副作用の頻度、過量投与の有無、年齢、性別などの特徴を報告しています。
研究の結果と考察
(論文より拝借)
こちらがメインの結果となります。
英語で読みづらいと思いますので、簡単に解説すると、神経系の副作用の多い印象です。
例えば、失調(ataxia)、眠気(somnolence)、nystagmus(眼振)、意識レベルの低下(confusion)などが上位にいます。
過量投与による副作用が多い傾向にあります。
一方で、少数ではありますが、通常量の投与でも副作用が起こりうることが分かります。
低年齢で副作用の報告が多い
こちらもTable 3の一部を抜粋したものですが、2ー4歳に副作用の報告が多い傾向にあるのが分かります。
4歳未満への投与が推奨されていないにも関わらず、市販薬などを介して投与されている実状が分かります。
研究の問題点
今回の研究はケースシリーズでして、いわば「副作用がありました」という報告を集めたものです。
副作用の報告は症例報告や少数のケースシリーズが多いので、これだけ多くの情報を集めたことは非常に価値があると思います。
一方で、コホート研究にように母集団(つまり薬を使用した人全員:分母)が不明なため、実際にどのくらいの割合(%)で副作用が起きているのか分かりづらい結果となっています。
これは今後の課題とも言えそうです。
まとめ
今回の研究では、
- 4歳未満
- 神経系の症状(眠気、失調、幻覚、意識レベルの低下など)
- 過量投与例
で副作用が多い傾向にあります。
日本でも市販薬・処方薬共にシロップとして使用されていることがあるため、過量投与には気をつけたいところです。
また、正しく使用したとしても、副作用が出てしまう可能性があります。