これまでは咳止めについて、あれこれと解説してきました。
ざっくりと結果をまとめてしまうと「はちみつ≥デキストロメトルファン>無治療 or 抗ヒスタミン薬」という結果でした。
一晩かぎりで2歳以上を対象とした研究がほとんどですが、はちみつは咳止め薬と比較して、おそれく同等以上の効果がありました。
さらに、無治療や抗ヒスタミン薬と比較すると、咳止めとしてはおそらく優れているでしょう。
咳止めとの優劣は少しクリアになりましたが、ここで「去痰薬と比べてどうなの?」という話が出てくると思います。
そこで、今回はちょうどドンピシャの論文をみつけましたので、簡単に解説していこうと思います。
研究の背景
小児はよくかぜをひきますが、咳がが最も辛い症状の1つであるのは間違いないでしょう。
咳によって夜間にこどもも保護者も眠れなかったり、睡眠の質が低下する報告は多数あります。
このため、これまで複数のランダム化比較試験がなされ、一晩かぎりですが、はちみつは咳止めとして、咳止め薬と同等かそれ以上、抗ヒスタミン薬や無治療より有効である可能性が高い結果が報告されています。
咳を考えてみると、乾いた咳(乾性咳嗽)と湿った痰がらみの咳(湿性咳嗽)なんて区別することがあります。
こどものかぜを診ていると「最初は乾いた咳だったけれど、途中から鼻水が増えてきて、徐々に痰がらみの咳になってきました」というケースが非常に多いです。
ここで、去痰薬で痰がらみが解消してしまえば、咳も和らぐのではないかと仮説が立てられます。
研究の方法
今回の研究はイスラエルで行われたランダム化比較研究で、
- 2013-2014年
- 対象年齢は2−5歳
- 咳・鼻水などかぜ症状が7日未満
- 慢性疾患なし
- 24時間以内に内服薬を使用していない
を対象に研究が行われました。
咳の評価
咳の評価はこれまでの研究と同じく、
- 咳の頻度
- 咳の重症度
- 咳による苦痛
- こどもの睡眠
- 保護者の睡眠
の5項目を0〜6点で評価しています。
咳の頻度と睡眠が3点以上の小児を最終的に研究対象としています。
咳の評価は治療前〜4日後まで行われています。
治療・介入について
治療は2種類で、
- はちみつ入りのシロップ
- カルボシステイン入りのシロップ
を1日3回投与しています。
はちみつの種類について
はちみつ入りのシロップですが、Grintuss®という製品を使用しています。
こちらのシロップには、はちみつ以外にも樹脂(resin)、グリンデリア(ガムウィード植物)、ヘラオオバコ(Ribwort Plantain)などが配合されているようです。
研究の結果と考察
どちらのグループも研究期間内で咳は改善しています。
- 咳の頻度
- 咳の重症度
- 咳による苦痛
- こどもの睡眠
- 保護者の睡眠
これら5つの指標の全てにおいて、はちみつグループの方が改善が大きい傾向にありました(4日間で)。
考察
こちらの研究では地域特産のはちみつではなく、市販されている商品を使用した点がこれまでの研究からの大きな変化でした。
地域特産のはちみつですと、一般化する際に問題(Generalizability)が生じてしまう可能性があります。しかし、市販製品ですと、ある程度は流通されているものなので、この研究をしている集団や地域以外への汎用性を考えると好ましいと思います。
あと、これまでの蜂蜜と小児の咳の研究は一晩限りのものが多かったです。
今回の研究は合計で4日ほど見ており、有効性のトレンドを評価がされている点でも新規性があると思いました。
まとめ
今回の結果では、イスラエルの2−5歳の小児のかぜにおいて、はちみつはカルボシステインより優れた鎮咳効果があるかもしれない、という結果でした。
1つのRCTですので確定的なことは言えませんが、今後も類似の研究結果が蓄積することが望まれます。
イスラエルにおける2−5歳の小児において…
- カルボシステイン(ムコでイン®︎など)より、ハチミツの方が咳止め効果が良さそう
*1歳未満はハチミツNGです。