- 『抗ヒスタミン薬は小児のけいれんを誘発する』
と聞いたことがある保護者の方がいるかもしれません。
私もよくtwitterやブログで記事にしているため、「そんなこともう知っているよ」と思われてしまうかもですね。
抗ヒスタミン薬とけいれんの関連性を報告した論文は多数あるのですが、1つ1つ詳細に読んでいる医療者も少ないと思います。
今回は日本で行われた研究があったので、ご紹介します。
こちらの論文を小児科医として、また疫学者としての視点から解説していこうと思います。
研究の方法
こちらの研究は日本国内のある病院で2000〜2002年に行われた研究です。
- 基礎疾患がない(てんかん、脳の奇形、代謝疾患、けいれんの既往歴など)
- けいれんで受診した
患者を対象に研究が行われています。
- 抗ヒスタミン薬を内服していたか?
- けいれんの持続時間が5分以上か?
という2点を中心にデータ解析がされています。
研究の結果と考察について
対象となった95人中、66人が解析対象となりました。
抗ヒスタミン薬とけいれん時間について
内服あり | 内服なし | |
5分以上 | 11 (69%) |
18 (36%) |
5分未満 | 5 | 32 |
合計 | 16 | 50 |
抗ヒスタミン薬を内服しているほうが、5分以上のけいれんを発症するリスクが1.91倍ほど高かったです(95%CI RR, 1.16〜3.14)。
抗ヒスタミン薬の内訳は、以下のようでした。
第一世代 | シプロヘプタジン(ペリアクチン®︎) クロルフェニラミン(ポララミン®︎) クレマスチン(テルギンG®︎) |
第二世代 | ケトチフェン(ザジテン®︎) |
考察と感想
どうやらこの結果だけをみると、抗ヒスタミン薬はけいれんの持続時間が長くなりそうな印象です。
抗ヒスタミン薬は脳に作用して、けいれんの閾値や持続時間が変わるのは、機序からもなんとなく理解できます。
ですが、いくつか注意したほうがよい点もあります。まずは、年齢による交絡です。
内服あり | 18.5ヶ月(11.5-45.8) |
内服なし | 23.0ヶ月(18.3-48.5) |
月齢の中央値を内服あり/なしで比較をすると、5ヶ月ほど異なります。
たとえ統計学的な有意差が2つのグループになくても、乳幼児の5ヶ月の差は非常に大きいと思います。
単に内服していたグループが月齢が低く、(脳の発達が未熟なので)けいれんが長かっただけなのかもしれません。
(国外の研究でも同様の結果でしたが、やはり抗ヒスタミン薬を飲んでいるグループは低月齢の傾向がありました)
あとは、アウトカムについても気になる点がありました。
今回は5分以上/以下で2つにわけていますが、実際のところこの2つのグループで、どの程度けいれんが持続していたのか(中央値や平均)が気になります。
まとめ
今回の研究では、抗ヒスタミン薬はけいれんの持続時間が長くなるかもしれないという結果でした。
しかし、抗ヒスタミン薬を内服しているグループは低月齢の傾向があり、単に脳の未熟性をみているだけなのかもしれません。
他の研究結果をみつつ、総合的に判断したいと考えています。