- 『個々の研究結果を見てきたけれど、アンブロキソールの科学的根拠(エビデンス)は実際どう評価されているのだろうか?』
と気になっている方がいるかもしれません。
とある治療の有効性に関連する研究の評価を知りたい時は、システマティック・レビューとメタ解析を参照すると良いでしょう。
自分では網羅的に探したと思っていても、実は漏れがあったり、気づかないうちにチェリーピッキング(都合のよい論文のみを読む)をしてしまっていることもあります。
今回はコクランでアンブロキソールがどのように評価されたかをみていきましょう。
これまでにアンブロキソールが小児の呼吸器感染症に有効かを検証するために、複数の研究を解説してきました。
最初の記事は健常児の肺炎、2つ目の記事は嚢胞性線維症を対象に行なっています。
日本では嚢胞性線維症は非常にまれですので、健常児の肺炎での有効性のほうが相対的に気になるところでしょう。
こちらが研究結果になります。
結局のところ、私が探し出した論文1本しか、有効性を検討した研究がなかったようです。
Principi reported that cough disappeared more rapidly in children treated with ambroxol than in the placebo group (Principi 1986). However, in the data and analysis section for the primary outcome of ‘not cured or not improved’ (defined on chest X‐ray), there was no significant difference between groups (odds ratio (OR) 0.40, 95% confidence interval (CI) 0.10 to 1.62)
この研究の著者らは本文中でも、Principiの研究しか引用していません。論文の解釈もほぼ同じで、アンブロキソールは
- 治癒も改善もなしをアウトカムにすると有意差がない
- 治癒率だけをアウトカムにすると有意差がある
- 咳の重症度はやや改善する傾向にある
- 副作用は認めなかった
の4点になります。
このコクランの論文を発表した研究者らも、他の研究を探したが見つけられたなったと述べています。
日本の医療現場を思うに、アンブロキソール(ムコソルバン®︎・プルスマリン®︎)も外来で非常によく処方されている薬です。
しかし、外来のセッティングで有効性を検証した文献(査読付きの英語論文)は小児科領域ではどうやらなさそうな印象です。
肺炎で入院した患者への有効性は示唆されていますが、この論文だけで日常の外来でのかぜ診療に入れるべきかは、判断が難しいですね。
明日は大人のメタ解析の結果を解説しようと思います。