今回もトラネキサム酸(トランサミン®︎)の有効性を検証した国内のRCTをみてみましょう。
成人での研究になってしまいますが、私の知る限りで、小児で類似の研究が行われていないようなので、ご容赦ください。
咽喉頭・口腔疾患におけるTranexamic acid(Transamin®︎)の使用経験 -二重盲検法による-. 臨床と研究;46:243
研究の方法
今回は1967〜1968年に、15歳以上の成人で
- 急性咽喉頭炎:97例
- 急性扁桃炎:31例
- 口内炎:40例
の合計168例を対象に、RCTが行われました。治療は、
- トラネキサム酸(トランサミン®︎)
- プラセボ(偽薬)
を投与し、4日後にアウトカムを評価しています。
アウトカムの評価
初診時に自覚症状(疼痛)、他覚症状(腫脹・発赤)により重症・中等症・軽症に分類しました。さらに4日後にアウトカムを評価し、
と評価をしています。(表は原著論文から拝借)
結果と考察
合計で168名が参加し、84人がトラネキサム酸を、84人がプラセボで治療されました。
こちらが結果になります(表は論文より拝借)。
論文中にはどのような検定がされたか明記されていませんが、全患者、口内炎、咽頭炎において有効率が優位と判断しています。
少し手元の統計ソフトで計算をしてみましょう。
n < 5のcellがあるので、正確検定を行います。
患者全体
こちらが私の統計ソフトで行った結果になります。
著者らは意図的にカットオフ値を使って計算していますが、あまり好ましくなく、アウトカムの評価通りに計算したほうがよいでしょう。
患者全体としてはトラネキサム酸(トランサミン®︎)に有効性はありそう、という結果でした。
急性咽頭炎
急性咽頭炎の患者でも有効性はありそうという結果でした。
急性扁桃炎
扁桃炎については有効性はなさそうな結果です。
口内炎
口内炎は2グループで統計学的な有意差があり、有効性はありそうという結果でした。
考察と感想
全体としてはトラネキサム酸(トランサミン®︎)に有効性がありそうでした。
特に咽頭炎、口内炎では良好な結果で、扁桃炎はそうでもなさそうな印象です。
二重盲検化されているので、アウトカムの評価などでバイアスは入りづらくなっていると思われます。
しかし、今回のアウトカムは患者のアウトカムの評価は、痛みや喉の所見を総合的に評価しておりやや曖昧です。
アウトカムをもう少し患者さんによる評価に近づけるには、リッカート・スケール(Likert Scale)などで、患者さんに痛みや違和感を0〜4点などで個々に評価してもらった方が良かったかもしれません。
あと、感染症ですが個々のウイルスは解析が難しいとして、溶連菌など細菌性が原因だった症例がどの程度あったのかも気になりました。
とはいえ、かなり昔の研究ですので、これらを望むのは少し無理があるかもしれませんね。
RCTを行ったのに、なぜか英文誌に掲載されていない点も気になりました。
著者らに興味がなかったのか、途中で頓挫してしまったのか、これはさすがに私も分かりませんね。
まとめ
今回はトラネキサム酸(トランサミン®︎)が口内炎や咽頭炎に有効そうという結果でした。
他の古い研究とは異なり、統計学的評価も私の統計ソフトと一致しますし、それほど悪い印象はありませんでした。
成人での結果ですので、小児のどこまで一般化できるかはやや難しいですが、参考にはなる結果と思います。