科学的根拠

小児の解熱鎮痛薬について:アセトアミノフェン(カロナール®︎)

  • 「子供用の解熱鎮痛薬(熱冷まし・痛み止め)をください」

と外来でお願いされることがあります。
お子さんが風邪によって発熱したり、喉の痛みなどがひどいと辛そうなので、熱を下げてあげたり、痛みを緩和させてあげたくなるのも当然でしょう。

解熱鎮痛薬ですが、大きく分けて

  •  アセトアミノフェン
  •  NSAIDs

の2つがありますが、安全性の面から小児科医は好んでアセトアミノフェンを使用しています。
今回の記事では、まずはアセトアミノフェンについて、どのような機序で熱や痛みに効くのか、どのような名前で使用されているか、一般的な副作用は何か、といった点に触れながら解説していこうと思います。

本記事の内容

アセトアミノフェンの…

  •  作用機序を知る
  •  含有する薬の名前を知る
  •  一般的な副作用と注意点を知る

普段、小児科外来で保護者の方々へ説明しているような内容に基づいて説明していきましょう。

アセトアミノフェンの作用機序について

  •  「なぜアセトアミノフェンが熱を下げたり、痛みを軽減させる効果があるのか?」

という点から解説していきましょう。
かくいう私も、慢性の副鼻腔炎があるため、痛みが酷い時や、悪化しそうな予感がするときは、まずはアセトアミノフェンを飲んでいます。

まずは作用機序について、現時点で分かっている点について説明します。

実は、詳細な作用機序が分かっていないアセトアミノフェン

実はアセトアミノフェンはNSAIDsほど、薬の作用機序が明確には分かっていないようです。

一般的に感染症などに罹患をすると体内で炎症が起こりますが、この炎症の一部はシクロオキシゲナーゼ(COX)を介して、プロスタグランジン類の合成し、炎症や痛みが増強して、私たちは痛みや発熱を感じています。

このシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してしまえば、プロスタグランジンE2(PGE2)の合成は抑制されるため、痛みや炎症が軽減され、解熱・鎮痛作用があります。

アセトアミノフェンの作用機序は、

  • 中枢神経におけるCOX阻害
  • カンナビノイド受容体やセロトニンを介した下行性抑制系の賦活化

などが考えられていますが、実は詳細な機序は未だに解明されていません。

アセトアミノフェンを含む処方薬について

アセトアミノフェンは小児科外来でよく処方される薬の1つです。
処方薬名としては、以下のものがあります:

  •  アンヒバ
  •  アルピニー
  •  カロナール
  •  ピレチノール
  •  コカール
  •  パラセタ
  •  ピリナジン

などで処方されることがあるでしょう。

Dr.KID
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いろんな名前で処方されていますが、中身はアセトアミノフェンで一緒です。

配合薬として含まれていることも

また、総合感冒薬のような配合薬としてアセトアミノフェンを含んでいる場合もあります。

  •  小児用PL顆粒
  •  小児用ぺレックス

などが該当します。

注意点として、総合感冒薬にアセトアミノフェンが含まれている場合、さらに追加で解熱剤としてアセトアミノフェンを内服してしまうと、過量投与になってしまうことがあります。

アセトアミノフェンを含む市販薬について

意外と知られていないことですが、小児の市販薬にもアセトアミノフェンを含むものも複数あります。例えば、

  •  小児用バファリン
  •  ムヒのこども解熱鎮痛顆粒
  •  こどもパブロン坐薬

が該当します。

市販薬で注意したいこと

市販薬をみる際のポイントとして、

  • アセトアミノフェンが含まれていること
  • 余分な成分が含まれていないこと

の2点になります。

「余分な成分」についてですが、小児のかぜ薬の総合感冒薬には、第一世代の抗ヒスタミン薬や咳止め(コデインやデキストロメトルファン)が含まれていることがあります。

例えばこちらのシロップはアセトアミノフェン以外にも、クロルフェニラミン(抗ヒスタミン薬)やデキストロメトルファン(咳止め)が含まれています。
両方とも小児には副作用のリスクがあるため、特に5−6歳以下のお子さんの内服はお勧めできません。

また、前述した通り、市販薬と処方薬を同時に飲もうとすると、過量投与になってしまうことがあります。
ですので、医療機関に受診して処方薬のある場合、市販薬をやめにするか、併用しても大丈夫か医師や薬剤師さんに相談するようにしましょう。

アセトアミノフェンの副作用について

アセトアミノフェンは用量や投与間隔を守れば、基本的には安全な薬であるため、小児科医は好んで処方をしています。
例えば、アセトアミノフェンにはNSAIDsのような胃腸障害や腎障害の副作用は滅多に起こらないと考えられています。

しかし、アセトアミノフェンの副作用として肝障害には注意が必要です。
特に過剰投与された場合に肝障害が起こりやすいため、使用する量と間隔(〇〇時間以上空ける)などは注意したいところです。

まとめ

今回はまずはアセトアミノフェンについて簡単に解説してきました。

小児科外来に受診したことのある保護者の方であれば、お子さんに処方される機会も多く、馴染深いお薬なのかもしてません。
逆にいうと、よく処方される薬だからこそ、注意点や副作用など、ポイントだけでも知っておくと良いでしょう。

 

まとめ

アセトアミノフェンは…

  •  小児でよく処方される解熱鎮痛薬
  •  処方名:カロナール®︎、アンヒバ®︎、アルピニー®︎、コカール®︎など
  •  市販薬もある
  •  総合感冒薬に含まれていることがある
  •  基本的に安全な薬だが、過量投与には注意したい

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。