科学的根拠

解熱薬や冷水などは、風邪をひいた小児の解熱に有効か?【RCT】

  •  「解熱薬を使ったのですが、全然熱が下がらなかったです」
  •  「小児の熱冷ましって本当に効くんですか?」

解熱薬を使用してみたものの、全然、熱が下がらなかったなんてことが時にあるかもしれません。
あるいは、思ったほど熱が下がらなくて、「本当に子供に効くのかしら?」と首を傾げてしまうケースもあるでしょう。

このため、今回はこちらの研究をピックアップしました。

1970年に出版された論文ですので、かなり古いものになりますが、小児の発熱に解熱薬が効くか否かを検証した貴重な研究になります。こちらの研究では、

  •  解熱薬は小児の発熱を軽快させるのか?

という根本的な疑問に答えています。

研究の背景

発熱で小児科外来を受診される患者さんは多数いますが、発熱時に熱を下げる方法として、

  •  安静
  •  氷枕や氷嚢を使用
  •  扇風機にあてる
  •  エアコンを効かせる
  •  解熱薬をしようする
  •  (水などを浸した)スポンジやタオルを使用する

などが行われていることが多いです。

今回の研究では、解熱薬の使用、水などで浸したスポンジの有効性を検証しています。

研究の方法

今回の研究はハワイで1968-1969年に行われました。

  •  6ヶ月〜5歳
  •  39.4℃以上の発熱が3日未満
  •   4時間以内に解熱剤を使用していない

発熱した小児を対象に研究が行われました。

治療の割付について

発熱時の対処法として、ランダムに6つの治療方法を割り当てています(Tableは論文より拝借):

ちょっと分かりづらいかもしれないので、以下のようにTableにまとめてみました。

No. 解熱薬 スポンジ
1 なし なし
2 なし ぬるま湯
3 あり なし
4 あり ぬるま湯
5 あり 冷水
6 あり ぬるま湯
アルコール

ぬるま湯は29.4-32.2℃、冷水は4.4-10℃くらいに調整されたようです。
アルコールはisopropyl alcoholを使用しています。

スポンジありのグループでは、室温25℃・湿度70%ほどの部屋で衣類を脱がせ、ぬるま湯または冷水を浸したスポンジで体幹と四肢をスポンジを当てたりこすったりして、皮膚を冷却させたようです。

アウトカム

アウトカムは体温でして、治療開始後15分毎に計測し、38.3℃以下になるまでの時間を測定しています。

また、小児の不快感、悪寒戦慄、顔面蒼白、チアノーゼ、鳥肌も同時に確認しています。

研究の結果と考察

対象となった患者の特徴は以下の通りになります:

  •  月齢 26ヶ月
  •  男女比 = 59 : 41
  •  上気道炎 = 32%
  •  中耳炎 = 31%
  •  肺炎 = 9%
  •  溶連菌性扁桃炎 = 8%
  •  不明 = 4%
  •  そのほか = 16%

解熱するまでの時間

まず「1.無治療」のグループは体温が全く変化しませんでした。

「2. ぬるま湯のスポンジのみ」と「3. アセトアミノフェンのみ」のグループは、治療を開始して30〜90分ほどで39℃以下まで低下しましたが、38℃後半で横ばいとなり、2時間以内に38.3℃以下になることはありませんでした。

解熱薬と水を浸したスポンジを使用したグループ(4〜6)は治療開始から75〜120分の間に38.3℃以下になりました。

また最も体温の低下が早かったのは、アセトアミノフェン+冷水を浸したスポンジを使用した群になります。

治療に関する満足度について

特に冷水やアルコールを含むスポンジを使用した場合に、不快に感じた小児が多かったです。

一方で、プラセボグループやアセトアミノフェンを内服したのみのグループは満足度は高かったです。

Dr.KID
Dr.KID
熱が早く下がっても、子供が不快になり、不機嫌となったら熱を下げる意味があまりないかもしれないですね。

感想と考察

恥ずかしながら、1970年代にこのような研究をしていることを私は知りませんでした。
非常に興味深い研究と思います。

まず、ぬるま湯のスポンジで体を拭くと、少なからず熱が下がることに少々驚きました。
確かに、発熱時にぬるま湯に入浴することで、熱が発散して少し熱が下がることがあると、昔の指導医から教わったことを思い出しました。

また、一見すると冷水で体を拭くと体温の冷却は早そうで、良さそうな印象を受けてしまいます。
ですが、風邪をひいた時の体温コントロールで重要なのは、平熱に無理に戻すことではなく、発熱による不快感を除いてあげることです。
このため、今回の研究結果では、冷水で体を拭くと体温の冷却は早まりましたが、この方法はお子さんにとって不快であり、苦痛を伴うものなので、私個人としてはあまりお勧めできないと感じました。

Dr.KID
Dr.KID
熱は完璧に下がらなくても、苦痛が取れて、本人が楽になる方がメリットが大きいでしょう。熱を下げるために、本人が不機嫌になるようなら、本末転倒な治療とも言えます。

まとめ

今回の研究では、解熱剤を使用することで、確かに風邪による発熱には有効性がありそうでした。

また、ぬるま湯や冷水を浸したスポンジで体を拭くことでも解熱効果は望まそうです。

しかし、後者はお子さんにとって苦痛を伴う行為であることに留意しておく必要があります。

まとめ

小児のかぜによる発熱は…

  •  解熱薬を使用すれば、熱は一時的には下がる
  •  ぬるま湯や冷水を浸したスポンジで体幹・四肢を拭くと、さらに熱は下がりやすくなる
  •  体幹・四肢を拭くのは苦痛を伴い、子どもが不機嫌となる可能性があるため、推奨度は低い

Dr.KID

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。