今回は、小児の発熱に、アセトアミノフェン、イブプロフェンとプラセボを比較した研究をピックアップしました。
今回の研究では、
- アセトアミノフェンよりイブプロフェンの方が解熱効果が強いか?
- 投与量によって解熱効果は異なるか?
といった点を調査しています。
研究の方法
今回の研究は、アメリカで行われたランダム化比較研究(RCT)で、
- 生後3ヶ月〜12歳
- 38.3℃〜40.5℃
- 熱性けいれんなの既往なし
- 慢性疾患なし
- 2時間以内に解熱薬は使用していない
などを中心に対象患者を選別しています。発熱に対する投薬は、
- イブプロフェン 5mg/kg
- イブプロフェン 10mg/kg
- アセトアミノフェン 12.5 mg/kg
- プラセボ
の4つに分けられています。
薬を投与した後に、6〜12時間ほど30分〜1時間おきに体温を測定しています。
研究結果と考察
最終的に178人の小児が研究に参加しました。平均体温は39.1-39.2℃でした。
- 平均年齢:3.36歳
- 平均体重:15.1 kg
- 平均対表面積:0.62 m2
でした。
こちらは研究前に使用していた薬剤です。
サンプル数が多くはないので、グループ間でのばらつきが気になります。
薬使用後の体温の推移
こちらの図は解熱薬使用後の体温の推移を表しています。
発熱の推移を見ていますが、アセトアミノフェンまたはイブプロフェンを使用したグループは、使用後3−4時間にゆっくりと体温が低下しています。
目視での確認になってしまいますが、
- アセトアミノフェンは1.5℃くらいの解熱
- イブプロフェン(10mg/kg)は1.8℃くらいの解熱
の効果がありそうです。
一方で、プラセボは(当たり前ですが)解熱していません。
投与前の体温が高いほど、熱は下がる
こちらのTableは初診時の体温によって解熱効果の違いがあるかを見ています。
特徴として、38.8℃以上の発熱の方が、解熱剤を使用後に大きく熱が下がる傾向にありました。
ランダム化して体温は均一なのになぜ?と思われた方がいるかもしれません。
これは治療効果の修飾(Effect modification)を見ているのです。
この図はAugmented DAGで、通常のDAGと異なり、interactionを考慮しています。
ランダム化は治療と初診時の体温の関連性は切断しますが、治療と初診時の体温の交互作用(治療 x 体温) を打ち消すことができません。
このため、ランダム化したとしても、体温によって薬の効き方が異なってしまったのです。
このことをeffect modificationと疫学者は読んでいます。統計学者はinteractionということもあります。
体温以外にも、男女や疾患の重症度で治療効果が異なる場合があります。
菌血症があると解熱しづらい?
著者らの原文をそのまま載せましたが、菌血症があった患者の方が体温の下りが悪かったと主張しています。(が、なぜかデータが提示されていない)
データが提示されていない以上、ジャッジは難しいので、こちらは少し保留にしておこうと思います。
確かに「解熱剤で熱が下がりにくいと、重症のことがある」と主張している医師もいます。データに裏打ちされたものかは、今後、どこかで説明できればと思います。
まとめ
今回の研究は、0〜12歳を対象に、異なる解熱剤の効果を推定してきました。
- アセトアミノフェンは1.5℃ほど
- イブプロフェンは1.8℃ほど
解熱させる効果がありそうで、およそ使用後3−4時間がピークのようです。
また、熱の下がり方は、使用前に熱が高い方が強そうな印象でした。