今回はこちらの論文をピックアップしました。ボリビアの小児を対象としてプロバイオティクスの有効性を検証したランダム化比較試験(RCT)です。
ボリビアにおけるロタウイルス胃腸炎の状況を確認すると、
- 胃腸炎の入院の40%を占める
- 胃腸炎による死亡の50%を占める
- ロタウイルスの19〜22.5%が入院している
となっています。
これまでの研究から、プロバイオティクスはロタウイルス胃腸炎の期間短縮に有効性がありそうと言われていました。
ほとんどの研究では単一のプロバイオティクスの有効性を見てきましたが、2つ以上を組み合わせても有効性があるかを検証した研究が少なく、今回RCTが組まれたようです。
研究の方法
今回の研究は、二重盲検ランダム化比較試験がボリビアで行われました。対象となったのは、
- ロタウイルス胃腸炎で入院
- 1〜23ヶ月
- 2007〜2008
- 低栄養ではない
- 重度な脱水や電解質異常なし
- 慢性疾患なし
です。ランダムに治療が割り付けられ、経口補水液に加えて
- Saccharomyces boulardii
- Lactobacillus acidophilus, Lactobacillus rhamnosus, Bifidobacterium longum and Saccharomyces boulardiiの4種類
- プラセボ
となっています。5日間投与して、その後に治療効果を判定しています。(詳細は以下)
アウトカムについて
研究のアウトカムは、
- 下痢の期間
- 嘔吐
- 発熱期間(38℃以上)
- 体重
です。
研究結果と考察
最終的に64人が解析対象となりました。
年齢にはやや偏りがある印象です。
下痢の期間
下痢の期間はこちらになります。
コントロールグループは下痢の期間の中央値が84.5時間で、プロバイオティクスを使用したグループは、それぞれお60時間と58時間になっています。
プロバイオティクスを1つだけ、あるいは4つの組み合わせで使用しても、同じように下痢の期間が1日ほど短くなっています。
P値の解釈について
皆さんはこのP値をどう解釈しますか?
例えば、プロバイオティクス4種類のグループは24.5時間ほど下痢の期間が短縮していますが、P値は0.06と統計学的な有意差はありません。
一方で、プロバイオティクス1種類のグループは、26.5時間ほど下痢の期間が短縮しており、P値は0.04と統計学的な有意差があります。
もし、統計学的な有意差 = 治療の有効性と勘違いしていると、
- プロバイオティクス4種類は有効性なし
- プロバイオティクス4種類は有効性あり
と間違った解釈をしてしまいます。
本質的にはP値が0.05を下回るか否かは重要ではなく、P = 0.06もP = 0.04も大した差はありません。つまり、プロバイオティクス4種類でも1種類でも1日ほど下痢の期間は短縮しているのです。
この事実を無視して、P値のみで結果の解釈を二分してしまうことの不毛さがここにあります。
まとめ
今回の研究ではプロバイオティクスは1種類でも4種類でも、小児のロタウイルス性胃腸炎の下痢を1日ほど短くさせる効果がありました。
入院患者での研究ですので、この結果を外来患者にまで外的な妥当性があるのかは少し慎重でいます。
あと、P値のみを見て、物事をジャッジしないようにしましょう。