今回は小児の下痢において、ヨーグルトとプロバイオティクスを比較した研究を発見したので、そちらを報告させていただきます。
プロバイオティクスが小児の下痢に有効かは、多数の研究が行われています。よく調査されている菌株は、
- Lactobacillus rhamnosus GG
- Lactobacillus reuteri
- Saccharomyces boulardii
あたりです。
ヨーグルトはLactobacillus bulgaricusやStreptococcus thermophilisなどで発酵されています。この研究が行われたトルコでは、ヨーグルトは手に入りやすい環境にあり、有効性を検証したようです。
研究の方法
トルコでオープンラベルのランダム化比較試験が行われました。対象となったのは、
- 5ヶ月〜16歳
- 1日3回以上の下痢あり:14日以内
- 7日以内の抗菌薬投与なし
- 慢性疾患なし
などを対象としています。胃腸炎の治療は、トルコでの標準治療として経口補水液 + 亜鉛を処方し、これに
- プロバイオティクス: S. boulardii (Reflor®︎)
- ヨーグルト飲料:L. bulgaricus & S. thermophilus 10^7
のいずれかをランダムに割付られています。
アウトカム
研究のアウトカムは、
- 下痢の期間
- 入院日数
- 嘔吐の期間
を見ています。
研究結果と考察
最終的に55人の小児が研究に参加し、28人がプロバイオティクスを、27人がヨーグルト飲料を投与されました。
平均月齢は21.2ヶ月、男女比は36:19です。
受診前に持続していた下痢の期間は平均2.38日でした。
ロタウイルスは、55人中32人が陽性でした。
下痢の期間について
まずは下痢の期間から見ていきましょう。
Probiotics | Yoghurt | |
下痢の期間, day (SD) |
4.54 (2.36) |
4.81 (1.79) |
便の正常化 | 3.07 (2.01) |
3.07 (1.73) |
下痢の期間や、便の正常化までにかかる日数は、プロバイオティクスもヨーグルトもそれほど大きな違いはなさそうですね。
(これらに統計学的な有意差もありませんでした。)
ロタウイルス陽性患者のみに絞ると、以下のようにヨーグルトグループの方が下痢の期間が2日ほど少なくなっています。サンプル数が少ないせいか、分散は広く、統計学的な有意差はありませんので、この推定は不正確になってしまいます。
Probiotics | Yoghurt | |
下痢の期間, day (SD) |
5.37 (2.4) |
3.25 (1.7) |
下痢の回数について
こちらが下痢の回数になります(原著より拝借)。どちらのグループも、下痢の回数は似たような傾向ですね。強いていうと、2日目はプロバイオティクスの方が下痢の回数がやや少ないようにも見えます。
ロタウイルス感染者に絞ってみると、以下の通りです:
ヨーグルトを摂取していたグループの方が、やや下痢の回数が少ないようにも見えますね。
入院とコストについて
入院とプロバイオティクス (Prob) or ヨーグルト (YF)に要したコストを比較しています。
Probiotics | Yogurt | |
入院コスト, $ | 443 (248) |
360 (249) |
コスト (Prob or YF) |
2.21 (1.18) |
0.35 (0.22) |
統計学的な有意差はありませんが、probioticsグループの方が入院コストが$83ほど高く、薬に$1.9ほど余分にかかっています。
まとめと感想
個人的には意外な結果でしたね。
ヨーグルトよりプロバイオティクスの方が製剤として菌株数が安定していますし、なんとなく確実に投与できそうなイメージでいたので、プロバイオティクスが優位になると予測していました。
患者全体でいうと、
- ヨーグルトとプロバイオティクスの成績はほぼ同等
- プロバイオティクスの方が、数日以内の下痢の頻度は若干改善が早いかも
といった印象でしょうか。
逆にロタウイルス患者に対象を絞ると、ヨーグルトの方が下痢の頻度は1−2回ほど減りそうですし、下痢の期間は短くなりそうな印象です。が、サンプル数が少ないので、推定としては不正確と言わざるを得ないですね。
まとめ
今回の研究では、トルコの小児の下痢においてプロバイオティクスとヨーグルトはほぼ同等の治療効果がありました。
推定としては不正確ですが、ロタウイルス胃腸炎に限ってては、ヨーグルトの方がやや成績が良いのかもしれません。