今回はこちらの文献をピックアップしました。
ミャンマーの小児を対象に、プロバイオティクスの下痢に対する有効性を検証しています。
Saccharomyces boulardiiが使用されましたが、胃腸炎に対して有効である理由は、
- 原因菌やウイルスを抑制する作用がある
- 抗炎症作用がある
- 栄養素の吸収を助ける
- 腸の粘膜を保護して回復を助ける
などが言われています。
アジアにおいて、Saccharomyces boulardiiは検証されたことがなく、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究はミャンマーにおいて、
- 3ヶ月〜10歳
- 急性胃腸炎で入院した患者
- 38.5℃以上の発熱がない
- 栄養不良ではない
- 慢性疾患がない
が対象です。治療は標準治療である経口補水液に加えて
- プロバイオティクス(Saccharomyces boulardii)を5日間投与
- 追加治療はない
をランダムの割付ています。
アウトカム
研究のアウトカムは、
- 下痢の期間
- 下痢の頻度
- 便の性状の変化
をメインに見ています。
研究結果と考察
最終的に100人の患者が研究に参加し、
- プロバイオティクス:50人
- コントロール:50人
の治療を割り当てられました。
下痢の期間について
2グループで下痢の期間を比較していますが、
- プロバイオティクス:3.08日
- コントロール:4.68日
と、プロバイオティクスを使用したグループの方が、1日半ほど下痢の期間が短かったです。
下痢の頻度が3回未満になるまでの期間
こちらの表は下痢が3回未満になるまでの期間を示していた。
入院後2−3日くらいでプロバイオティクスの方が下痢の頻度がより少なくなっているのがわかります。
便の性状の変化について
便の性状変化はこちらの表になります。
プロバイオティクスを使用したグループの方が、水様便から固形便に戻るまでの期間は早そうな印象を受けます。
考察と感想
今回の研究ではミャンマーの小児入院患者において、プロバイオティクスは下痢の期間や性状の回復を改善させる効果がありそうでした。
この研究の問題点としては、まずは盲検化が不十分な点が挙げられます。
本文中にはopen labelだったのか、blindをしたのか明記されていませんでしたが、methodの文脈から、おそらくopen labelであったと思われます。
この場合、下痢の期間や頻度、便の性状などの評価に影響してしまう可能性があるので、今回の研究はバイアスが混ざっているのかもしれません。
外的妥当性についてはどうでしょうか。
著者らはdiscussionで、今回の研究では20%ほどの小児が病原性大腸菌に感染したと記載しており、他の国からするとやや原因となる病原体が異なるのかもしれません。
例えば、2000年代ですと小児の下痢で多い原因はロタウイルスで60%ほど、近年はワクチンの普及もあり、ロタウイルス以外のウイルス性胃腸炎が増えており、細菌性はおよそ10%くらいと考えています。
下痢といっても原因が様々ですから、今回の研究結果が例えば日本の小児に当てはまるのかは、はっきりとはわかりません。
もちろん、日本の小児で効く可能性もありますが、ひょっとしたら無効である可能性も残されているのです。
まとめ
今回の研究はミャンマーにて3ヶ月〜10歳の小児入院患者を対象に、プロバイオティクスが下痢の期間を短縮するかを検討していました。
下痢の期間は1.5日ほど短縮させる効果がありそうですが、盲検化が不十分のRCTですので情報バイアスにより有効性が過剰に評価されている可能性はあり得ます。