プロバイオティクスでよく使用されている菌株はLactobacillus rhamnosus GGです。
この菌株以外ですと、Saccharomyces boulardiiやLactobacillus reuteriも比較的研究された数が多いです。
以前もいくつか研究結果を紹介してきましたが、「プロバイオティクス」と一言でいっても、様々な菌株がいます。
このため、ある菌株が小児の下痢に対して有効性があるからといって、他の菌株に有効性があるとは限らないのです。
Lactobacillus rhanmosusですら様々な菌株があるようで、GG以外にも、
- 573L/1
- 573L/2
- 573/L3
などがあります。今回の研究はこれらの菌株が有効であるかをポーランドで検証しています。
ポーランドでは、下痢のお子さんで入院するリスクは5%ほどであり、入院日数は平均9日ほどのようです。
研究の方法
ポーランドにで2ヶ月〜6歳を対象に二重盲検化ランダム化比較試験が行われました。対象となったのだ、
- 下痢が1日3回以上ある
- 参加時に5日以内の下痢
- 慢性疾患なし
などです。治療は、胃腸炎の標準治療(経口 or 点滴による補液)に加えて、
- L. rhamnosus 3種:573L/1 + 573/L2 + 573/L3
- プラセボ
を5日間投与しています。
アウトカムの評価
アウトカムは、
- 下痢の期間
- 点滴による補液の期間
- 副作用
- 消化管でのプロバイオティクスのコロニー形成
などです。
研究の結果
最終的に87人の小児が研究に参加しました。プロバイオティクスは46人、プラセボは41人が投与されています。
平均年齢は25ヶ月、男女比はほぼ同等(若干男児が多い)、下痢の期間はおよそ2日弱、下痢の回数は8回、50〜75%の小児が発熱がありました。
アウトカム
それぞれのアウトカムは以下の通りになります。
プロバイオティクス N = 46 |
プラセボ N = 41 |
P値 | |
下痢の期間 | 83.6 h (56) |
96 h (72) |
0.36 |
ロタウイルス 胃腸炎の下痢期間 |
N = 22 77.5 h (35) |
N = 17 115 h (67) |
0.03 |
点滴 | 15h (14) |
38h (33) |
0.006 |
コロニー形成 (5日) |
80% | ||
コロニー形成 (14日) |
41% |
結果を要約すると、
- プロバイオティクスは下痢の期間を半日ほど軽快させるかもしれないが、この推定はやや不正確かもしれない(P = 0.36)
- ロタウイルスに限っていえば、プロバイオティクスは1日半ほど短くなるかも
- 点滴の期間は1日ほど短くなるかも
といえます。
考察と感想
同じLactobacillusでも、様々な菌株があるようですね。この点はプロバイオティクスを使用する側、研究結果を実臨床に当てはまる側は注意が必要といえます。
とはいえ、割とLactobacillusは有効性を示した研究が多いので、臨床的には気にしすぎる必要はないのかもしれませんが、疫学的には「well defined intervention(よく定義された治療/介入)」を常に意識しているため重要ですね。
今回の研究は、全体としては二重盲検化もしていますし、もちろんランダム化もしているため、バイアスはそれなりにきちっと対処されていると考えています。
しかし、気になる点もありました。
1つは点滴が24時間ほど短くなっている点です。臨床的にはにわかに信じられない気持もしてしまいました。というのも、プロバイオティクスはそこまで即効性はなく、数日以上飲んで、ようやく下痢の頻度に差が見える程度の有効です。
わずか1日でこのような劇的な効果があるとはにわかに考え難いです。
そういう目で患者背景を比較してみると、プロバイオティクスあり vs. なし、では
- 治療前の下痢の期間: 46.3h vs. 41.8h
- 脱水(軽度): 27 vs. 21
- 脱水(中等度): 7 vs 10
とややプロバイオティクスグループの方が有利な条件であった可能性があります。サンプル数はそこまで多くはないので、どうしてもrandomization failure (ランダム化の失敗)の可能性はあり得ますので、注意して慎重に解釈をしておきたいところです。
まとめ
今回の研究は、ポーランドにで2ヶ月〜6歳を対象に、L. rhamnosus3種類(573L/1 + 573/L2 + 573/L3) の有効性を検証しています。
ロタウイルス胃腸炎の小児には下痢の期間を1日半ほど短縮させる可能性が示唆されました。
胃腸炎全体としても、半日ほど下痢の期間が短縮するかもしれませんが、追加検証が必要です。