科学的根拠

ビフィズス菌は小児の下痢の期間を短縮させるのか? インドネシア編

下痢が長引いているときに、乳糖の量を控えめにしたり、時には乳糖を一時的に制限してもらうことは臨床上でも時々あります。
下痢の時に乳糖を大量に摂取すると、下痢が長引いてしまう可能性があります。
なぜなら、腸が荒れてししまっており、乳糖分解酵素がうまく産生できなかったり、消化吸収できずに下痢になってしまうためです。

プロバイオティクスの役割の1つに乳糖の消化吸収を助ける役割が指摘されています。
理論上の話ですが、プロバイオティクスには乳糖分解酵素(β-galactosidase)を放出し、乳糖の消化を助ける働きがあると考えられています。

とはいえ、実臨床で使用して本当に有効性があるのかは、実際に使用してみないとわからない点が多々あります。
そこで、今回の研究が行われました。

研究の目的

こちらの研究はインドネシアの小児を対象に行われた、ランダム化比較試験になります。

  •  対象年齢は小児ですが詳細は?
  •  下痢の症状が3日以内
  •  入院が必要であった
  •  重症疾患がない
  •  慢性疾患がない

などが対象となっています。治療は、乳糖が多く含まれている人工乳(high lactose formula)に

  •  プロバイオティクス:Bifidobacterium bifidum
  •  コントロール

となっています。

アウトカムの評価

アウトカムの評価は、

  •  下痢の頻度
  •  下痢の期間
  •  入院日数

となっています。

研究結果と考察

最終的に100人の患者が解析対象となり、50人がプロバイオティクスを、50人がコントロールとなりました。患者背景は

  •  平均11.5ヶ月
  •  55%が男児
  •  低体重が38%
  •  母乳が55%
  •  入院前の下痢は2日ほど

となっています。ロタウイルス感染が55%、大腸菌感染(病原性などは触れておらず…)が36%となっています。

下痢の頻度について

日毎に下痢の回数の推移を見ています。

日数 プロバイオティクス コントロール
9.62
(4.12)
9.84
(4.04)
5.78
(3.64)
8.14
(3.26)
3.46
(2.42)
6.22
(3.05)
2.96
(1.37)
4.06
(2.84)

*4日以降はloss to follow-up(退院)が多いので、表から削除しています。

下痢の回数は使用して1日後から減少しているのがわかります。平均して2ー3回ほどでしょうか。

そのほかのアウトカム

その他のアウトカムは以下のようになります:

  プロバイオティクス コントロール
下痢の期間 1.1
(1.0)
2.6
(1.0)
入院日数 2.6
(0.8)
4.0
(1.1)

プロバイオティクスを使用したグループの方が、下痢の期間が1日半ほど、入院日数も1日半ほど短くなっています。

考察と感想

今回使用したプロバイオティクスはBifidobacterium bifidumでした。いわゆるビフィズス菌でして、哺乳類でも最もよく検出されるプロバイオティクスの1つですね。
下痢の回数、期間、入院日数を短縮させる効果があり、いずれも素直な結果かと思いました。

気になった点としては「high-lactose formula」の意味ですね。
おそらく通常の人工乳のことを指して言っているのでしょうが、詳細な記載がなく、真意が読み取れませんでした。通常の人工乳であればinfantile formulaとかmilk formulaと書いてくれれば良いのですが、なぜわざわざ「high-lactose」と記載したのかが気になってしまいました。Low-lactoseに対して、high-lactoseという意味でしょうか。ですが、となるとstandard doseのlactoseはないのでしょうか?

こういうときは、具体的な商品名を書いたり、appendixなどで成分表を記載してくれるとありがたいと思いました。

まとめ

今回の研究において、プロバイオティクスは入院が必要であった乳幼児の下痢の回数を減らし、下痢の期間を1日半ほど短くさせる効果がありました。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。