アレルギー体質があると、副鼻腔炎になりやすいことは昔から知られています。研究によってばらつきが大きいですが、アレルギー疾患のあるお子さん(特に喘息や花粉症)のうち、25%〜70%くらいで副鼻腔炎を合併すると言われています。
特に小児は風邪を引きやすいので、ふとした拍子に副鼻腔炎に進展してしまうケースはあるでしょう。
鼻洗いは、生理食塩水などで鼻の中を直接洗うことで、鼻腔内を浄化し、組織の炎症を和らげ、傷んだ箇所の回復の手助けになります。
これまでの研究は、特に既往症のないお子さんの鼻洗いの有効性を検討したものをご紹介してきました。
今回の研究は、アレルギー体質のあるお子さんをターゲット、鼻洗いが急性副鼻腔炎に有効かを検証しています。
研究の方法
今回の研究は2006〜2009年にかけて台湾で行われました。対象となったのは、
- 風邪に罹患し、膿性鼻汁が7日以上ある
- 3〜12歳
- レントゲンで上顎洞に以上所見あり
- プリックテストで吸入抗原陽性あり
- アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎、喘息、鼻炎)あり
などを基準にしています。
治療について
治療は0.9%生理食塩水を15〜20 mlを使用して鼻洗いを1日1〜3回ほどしています。コントロールグループは鼻洗いはせず、通常の診療のみで経過を見ています。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 鼻の通気
- QOL
- レントゲン所見
- 眼、鼻、咳などの症状
などを指標にしています。
研究結果と考察
最終的に60人が研究に参加し、鼻洗いグループが29人、コントロールグループが31人となっています。患者背景の特徴としては、
- 2/3が男児
- 平均年齢は6歳ほど
- 5割ほどはアレルギー性鼻炎がある
でした。
鼻の通気について
nasal Peak Expiratory Flow Rate (nPEFR) という指標を使用して、呼気時の鼻の通気の最大速度を比較しています。高ければ鼻の開通が良いと言えます。
鼻洗い | あり | なし |
2週 | 11.05% | -19.35% |
3週 | 23.72% | -11.91% |
鼻洗いをしたグループは、鼻の開通は2週目、3週目も改善しています。一方で、鼻洗いをしなかったグループは鼻の通気は改善せず、むしろ悪化していたようです。
QOLについて
3週間後のQOLを比較した表は以下の通りです。
鼻洗い | あり | なし |
3週 | 42.58% | 27.51% |
こちらはQOLのスコアの改善率を見ていますが、鼻洗いをしたグループの方がQOLの改善率は高かったです。
レントゲン所見について
Water’s法で副鼻腔の所見を確認しています。
鼻洗い | あり | なし |
3週 | 34.36% | 33.84% |
鼻洗いの有無と、レントゲン所見の改善度には有意差はありませんでした。
そのほかの症状について
- 目のかゆみ
- 涙
- 目やに
- 鼻汁
- 鼻閉
- 鼻のかゆみ
- くしゃみ
- 喉のかゆみ
- 咳
- 睡眠の質
- 活動性
など様々な項目を評価しています。
これらを2グループで比較して、改善を認めたのは、鼻閉と睡眠の質でした。
鼻の通りが良くなって、良質な睡眠ができたのかもしれないですね。
考察と感想
今回の研究は台湾の3〜12歳を対象に行われましたが、鼻洗いをすると鼻の通気性は良くなり、QOL(生活の質)は改善しそうな印象です。さらに、自覚症状としての鼻づまりが改善し、睡眠の質がやや改善するのかもしれません。
一方で、レントゲン所見には反映されなかったようです。
過去の行われた研究結果と比較しても、わりと同じような結果と思いました。
特に鼻の症状は軽快しやすい傾向にありますね。鼻を洗うことで通気性は改善する結果ともいえます。
気になった点としては、統計学的な検定量の多さでしょうか。
そのほかの症状は大量に比較しているため、統計学的な有意差の水準(α=0.05)を少し工夫しても良かったのではと思いました。
まとめ
台湾において、アレルギー素因のある3〜12歳のお子さんの急性副鼻腔炎に、鼻洗いの有効性を確認する研究が行われました。
鼻洗いをすると鼻の通気性は良くなり、QOL(生活の質)は改善しそうな印象です。
さらに、自覚症状としての鼻づまりが改善し、睡眠の質がやや改善するのかもしれません。
先日、こちらの商品を購入しました。色々と使用できるホットプレートですので、早めに試してみようと思います。