小児の急性下痢症の原因の多くは、ウイルス性の胃腸炎です。基本治療としては、
- 安静
- 水分・塩分・糖分の適切な摂取
になります。これに追加して整腸剤(プロバイオティクス)を追加することもありますが、有効性は下痢の短縮効果は1日程度、最近の大規模調査では有効性は認められないかもしれない、といった結果が出ています。
ロペラミド(ロペミン®︎)は、腸の動きを抑制することで下痢の頻度を減らす効果があると言われています。腸が動かなければ、下痢を含む便は排出しづらくなるため、下痢の頻度が減るという考え方です。
しかし、便中には下痢の原因となった病原体が潜んでいますし、下痢もこれらの病原体を排出するための体の手段です。無理に止めないほうが良いのでは、と考える小児科医が多いのではないでしょうか(少なくとも、私もその考えに賛同しています)。
また、ロペラミドは腸の動きを抑制する作用があるため、効きすぎると腸が動かなくなり、腸閉塞(イレウス)という状態になることがあります。今回は、この症例報告をご紹介させていただきます。
少し古い論文ですが、ご容赦ください。
症例報告
合計で4例の報告を手短に記載されていました。
症例1:1歳小児
ベルリンの小児病院で、1歳の小児にロペラミドを使用したところ、麻痺性イレウス(腸閉塞)となりました。
麻痺性イレウスは7日ほど持続し、5日目には手術を検討するほどでした。
ロペラミドの使用は、通常量(0.045 mg/kg)だったようです。
症例2:17ヶ月小児
同じ小児病院で、17ヶ月の小児がロペラミドの使用後に、麻痺性イレウス(腸閉塞)を経験しています。
症例1と異なった点としては、
- 重症度は症例2のほうが低かった
- 過量投与であった(1.4 mg/kg)
の2つです。
その他の症例
さらに、
- 18ヶ月の小児
- 31ヶ月の小児
も通常の治療量のロペラミドを投与され、同じように腸閉塞を経験しているようです。
考察と感想
この症例報告がされた理由ですが、この時期に、とある製薬会社の医師が
- ロペラミドが小児に有効であるとするエビデンスは多数ある
- 生後4ヶ月〜10歳の下痢の小児600人に使用して、有効であった
と発言し、小児の急性胃腸炎で推奨されることを示唆したのが契機だったようです。
この真意の妥当性については後日検証するとしますが、「どのようなエビデンスがあるのか」「どのくらい有効であったのか」という点は気になるところですね。参考文献をたどってみようと思います。
肝心の症例報告についてですが、確かにロペラミドは腸閉塞の原因となりうるのかもしれないのですが、これだけでは根拠が薄いと言わざるを得ないでしょう。
実はロペラミドを使用しなくとも、腸閉塞になっていたかもしれません。
また、どのくらいの頻度で腸閉塞を起こしているのかも、症例報告では推定することが困難です。
この辺りは、別の文献を遡ってみようと思います。
まとめ
小児の下痢においてロペラミドを使用し、4例ほどの腸閉塞の症例が報告されていました。
腸閉塞が起こる頻度や、ロペラミドとの因果関係に関しては、別の研究結果で確認する必要があります。
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