今回はロペラミド(ロペミン®︎)の副作用について、システェマティックレビューとメタ解析の結果をみながら検討してみました。
- 止瀉薬(下痢止め)には副作用があるのでやめておきましょう
と聞いたことがある方がいるかもしれません。この副作用がどのくらいの頻度か、どのくらいリスクが上昇するのか、データをみながらみていきましょう。
今回はこちらの論文をピックアップしました。
使用された文献
今回のシステェマティックレビューとメタ解析では、以下の文献からデータを取得しています
- Anderson J (1984) Double-blind comparison of loperamide HCl and placebo in the treatment of acute diarrhea in children. Adv Ther 1: 14–18.
17. - Loperamide in acute diarrhoea in childhood: Results of a double blind, placebo controlled multicentre clinical trial. Diarrhoeal Diseases Study Group (UK). BMJ (Clinical Research Ed.) 289: 1263–1267.
- Chavarria AP, Loria-Cortes R, Carrillo-Henchoz JM (1984) Control of pediatric diarrhea. Adv Ther 1: 115–119.
- Cordier MP, Mozziconacci G, Polonovski C (1987) Indications for loperamide in acute infantile diarrhea. Randomized double-blind study. Ann Pediatr (Paris) 34: 653–658
- Kassem AS, Madkour AA, Massoud BZ, Mehanna ZM (1983) Loperamide in acute childhood diarrhoea: A double blind controlled trial. J Diarrhoeal Dis Res 1: 10–16.
22. - Prakash P, Saxena S, Sareen DK (1980) Loperamide versus diphenoxylate in diarrhea of infants and children. Indian J Pediatr 47: 303–306.
23. - Vesikari T, Isolauri E (1985) A comparative trial of cholestyramine and loperamide for acute diarrhoea in infants treated as outpatients. Acta Paediatr Scand 74: 650–654.
- Motala C, Hill ID, Mann MD, Bowie MD (1990) Effect of loperamide on stool output and duration of acute infectious diarrhea in infants. J Pediatr 117: 467–471.
- Bowie MD, Hill ID, Mann MD (1995) Loperamide for treatment of acute diarrhoea in infants and young children. A double-blind placebo-controlled trial. S Afr Med J 85: 885–887.
- Karrar ZA, Abdulla MA, Moody JB, Macfarlane SB, Al Bwardy M, et al. (1987) Loperamide in acute diarrhoea in childhood: Results of a double blind, placebo controlled clinical trial. Ann Trop Paediatr 7: 122–127.
- Owens JR, Broadhead R, Hendrickse RG, Jaswal OP, Gangal RN (1981) Loperamide in the treatment of acute gastroenteritis in early childhood. Report of a two centre, double-blind, controlled clinical trial. Ann Trop Paediatr 1: 135–141
- Kaplan MA, Prior MJ, McKonly KI, DuPont HL, Temple AR, et al. (1999) A multicenter randomized controlled trial of a liquid loperamide product versus placebo in the treatment of acute diarrhea in children. Clin Pediatr (Phila) 38: 579–591.
結構、沢山の論分がありましたね。このうち、私がブログに掲載できたのは半分くらいでしょうか。中にはフランス語のものなどもあり、言語的な制約のため理解できないものもありました。悪しからず。
研究結果
結果はこちらになります
ロペラミド N = 927 |
プラセボ N = 764 |
|
イレウス 傾眠 死亡 |
8 | 0 |
イレウス 傾眠 |
7 | 0 |
死亡 | 1 | 0 |
イレウス 腹部膨満 傾眠 死亡 |
21 | 4 |
*イレウス = 腸閉塞
全体として重篤な副作用を認めている患者は2%ほどですが、いないわけではなさそうです。これらをrisk differenceとしてみてみましょう。
死亡のリスクはほとんど変わりませんが、消化器系や神経系の副作用はやや上昇する印象です。もともと稀な副作用ではありますが、イレウスや傾眠といった副作用のリスクは1%ほど、腹部膨満などやや軽微な副作用のリスクまで換算すると2%ほど上昇する可能性があります。
考察と感想
ロペラミドは、抗ヒスタミン薬やコデインなどと比較すると、副作用の出現頻度はかなり低い (2%)です。
ですが、特に乳幼児の胃腸炎の罹患率はそれなりに高く、高頻度で使用すると、かならず副作用の出る患者さんが出てきます。例えば、
- 1000人に使用すれば2人
- 1万人に使用すれば20人
- 10万人に使用すれば200人
- 100万人に使用すれば2000人
と数字は増えていきます(かなり極端な推定ですが…)。
イレウス(腸閉塞)や傾眠は入院や精査が必要となってくるため、やはり安易には使用したくないと感じてしまいました。
まとめ
ロペラミドを小児の胃腸炎で使用すると、副作用のリスクは全体で1.8%ほど上昇し、腸閉塞や傾眠といった重篤なものは0.8%ほど上昇すると考えられています。
私個人としては、ロペラミドなどの止瀉薬を乳幼児の下痢に使用するのは控えています。
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「副作用がある」と聞くと何となく怖くなってしまいますが、そこでとどまらず、実際のデータを確認して、どのくらいのリスクなのか、何%くらい増加するのか、そのあたりを事実として認識するのも大事ですね。ロペラミドの副作用は、思ったより低かったけれども、確かに存在するというのが、今回のわたしの感想でした。
今年読んだ書籍でインスパイアされたのが、こちらのファクトフルネスです。この本の良いところは、世界でおきている出来事を、印象ではなく、実際の数字でわかりやすく説明している点だと思います。わたしも、こんな風にプレゼンできたらと、日々修行です。
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