因果推論

Causal Mediation Analysis(因果媒介分析)③:Empirical Analogueについて

前回はCausal Mediation Analysisにおいて、2-way / 3-way / 4-way decompositionについて解説してきました。

Causal Mediation Analysis(因果媒介分析)②:Decompositionについて前回はCausal Mediation Analysisの概念や記載方法、前提条件について記載してきました。  https://www...

表記はpotential outcomeのフレームワークで行ってきましたが、これでは現実世界で計算をすることができません。

そこで、今回は、実際に治療(X)、媒介因子(M)、アウトカム(Y)を使用して、どのように計算していくか、empirical analogueで解説していきましょう。

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Causal Mediation AnalysisのEmpirical Analogue

Causal Mediation Analysisをする場合ですが、大きく分けて

  • Outcome regression
  • G-method

の2パターンがあります。

今回は、まずg-methodの1つであるg-computation (g-formula またはstandardization)のフレームワークで考えていきましょう。
もちろんIPWでも、sequential g-estimationでも導き出すことができます。

Total Effectのg-formula

まず、total effectのg-formulaを記載してみましょう。

  • Total Effect = E(Yx) – E(Yx*)

でした。まずE(Yx)の部分にg-formulaを使ってみると、以下のようにempirical analogueが作れます。Cで全てのbackdoor-pathを閉じることができると仮定をすると

  • E(Yx)
  • = ΣcE(Yx, c) *Law of probability
  • = ΣcE(Yx|c) P(c) *Law of probability
  • = ΣcE(Yx|x, c) P(c) *Conditional exchangeability
  • = ΣcE(Y|x, c) P(c) *Consistency

となります。ここまで持ち込めれば、potential outcome がempirical analogueになりました。これは因果推論(Causal Inference)の基本中の基本です。

例えば、Total Effectをg-formulaで記載すると、

  • Total Effect
  • = E(Yx) – E(Yx*)
  • = ΣcE(Y|x, c) P(c) – = ΣcE(Y|x*, c) P(c)

となります。

これがg-formulaにおけるmarginal causal effectです。

さらに、ここからmediator (M)を使用して、Yx= YxMxにします。

  • E(Yx)
  • = ΣcE(Y|x, c) P(c)
  • = ΣmΣcE(Y, m|x, c) P(c) *Law of probability
  • = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x, c) P(c) *Law of probability
  • = E(YxMx)

となります。

ここから、

  • E(YxMx) = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x, c) P(c)

となりますが、赤色で記した箇所がYとXの直接の関係、青色で記した箇所がXがMを介しYに与える箇所と言えます。

つまり、

  • Y model = E(Y|x, m, c)
  • M model = P(m|x, c)

の2つがΣ(summation)を介して繋がっているとも言えます。

 

4つのnested counterfactualとg-formulaについて

ここで4つのnested counterfactualとg-formulaを整理してみましょう。

4つのnested counterfectualは、YxMxとYxMx*とYx*MxとYx*Mx*でした。これをempirical analogueに変更すると、以下のようになります。

  • E(YxMx) = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x, c) P(c)
  • E(YxMx*) = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x*, c) P(c)
  • E(Yx*Mx) = ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x, c) P(c)
  • E(Yx*Mx*) = ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x*, c) P(c)

となります。

Pure Natural Indirect Effectの場合

Pure Natural Indirect Effectの場合、

  • E(Yx*Mx) -E(Yx*Mx*)

で記すことができます。

この場合、g-formulaを使うと、

  • E(Yx*Mx) -E(Yx*Mx*)
  • = ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x, c) P(c) – ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x*, c) P(c)

となります。

Total Natural Indirect effectの場合

Total Natural Indirect Effectの場合、

  • E(YxMx) -E(YxMx*)

で記すことができます。

この場合、g-formulaを使うと、

  • E(YxMx) -E(YxMx*)
  • = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x, c) P(c) – ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x*, c) P(c)

となります。

Pure Natural Direct EffectやTotal Direct Effectの場合

こちらも同様でして、Pure Natural Direct Effectは

  • E(YxMx*) -E(Yx*Mx*)
  • = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x*, c) P(c) – ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x*, c) P(c)

Total Natural Direct Effectは

  • E(YxMx) -E(Yx*Mx)
  • = ΣmΣcE(Y|x, m, c)P(m|x, c) P(c) – ΣmΣcE(Y|x*, m, c)P(m|x, c) P(c)

となります。

Regression based approachの場合

次にregressionを使用した場合をみてみましょう。

Regressionはg-formulaと異なりmarginal effectは見れません。このため、conditional effectを推定することになります。

例えば、Cがbackdoor-pathを閉じるのに十分であれば、E(Yx|c)は

  • E(Yx|c)
  • = E(Yx|x, c) *conditional independence
  • = E(Y|x, c) *consistency
  • = ΣmE(Y, m|x, c) *Law of probability
  • = ΣmE(Y|x, m, c)P(m|x, c) *Law of probability
  • = E(YxMx|c)

となります。

g-formulaとregressionでは異なるフレームワークであるのが理解いただけると思います。

例えば、Y-modelとM-modelを

  • P(M|x, c) = β0xx + βcc
  • E(Y|x, m, c) = θ0xx+θmm + θxmxm+θcc

と定義すると、

E(YxMx|c)は以下のようになります。

E(YxMx|c)
=  ΣmE(Y|x, m, c)P(m|x, c)
= θ0xx+θm(P(M|x, c) )+ θxmx(P(M|x, c))+ θcc

一方で、E(YxMx*|c)は、

E(YxMx*|c)
=  ΣmE(Y|x, m, c)P(m|x*, c)
= θ0xx+θm(P(M|x*, c) )+ θxmx(P(M|x*, c))+ θcc

となります。

このため、TNIEは、

E(YxMx|c) – E(YxMx*|c)
= θm(P(M|x, c) – P(M|x*, c)) + θxmx(P(M|x, c)– P(M|x*, c))
=(θm+ θxmx)(P(M|x, c) – P(M|x*, c))
= (θm+ θxmx)βx(x – x*)

となります。

今回はこれまでに解説してきたCausal Mediation Analysisを、g-formulaやregressionで求める方法を解説してきました。

実際に統計ソフトを使用した解析方法については、またの機会にお伝えできればと思います。

次回はmediatorが2つある場合のcausal mediation analysisについて解説しようと思います。

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。