前回はCausal Mediation Analysisにおいて、g-formulaとregressionを用いてempirical analogueを導入し、数式的な解説を紹介してきました。
そこで、今回は、実際に治療(X)、媒介因子(M)、アウトカム(Y)を使用して、どのように計算していくか、解説してきましたが、媒介因子(L)がもう1つあった場合にどうするべきか、ここで少し触れてみようと思います。
以下のような設定になります。
例えば、XからYへのdirect effect (LやMを介さない経路)を推定指定場合は、LやMを閉ざしてしまえば推定できます。
媒介因子が2つある場合のNatural Decompositionについて
これまで行ってきたCausal Mediation Analysisのようにnatural decompositionを行ってきた場合、考えられるdecompositionは以下の通りになります。
- XからYへのdirect effect
- Lを介したYへのindirect effect
- Mのみを介したYへのindirect effect
の3つです。
それぞれの解説をする前に、LとMを入れたnested counterfactualについて補足しておきます。
今回はLとMがあるので少しややこしいですが、まずはMのみのケースを考えてみましょう。
治療(X), 媒介因子(M), アウトカム(Y)の3のnested counterfactualは、以下の通りでした。
YxMx= Y(x, Mx)
これまでは便宜上、左側を使ってきましたが、ここからは右側の記載方法で解説していきます。
このnested counterfactualにLを考慮すると、以下のようになります。
- Y(x, Lx, M(x, Lx))
3つのパートに分かれてますが、シンプルに考えていけば理解できると思います。
例えば、
- Y(x, Lx, M(x, Lx))
この赤で記した部分は、XがLやMを介さずにYに影響した効果です。
- Y(x, Lx, M(x, Lx))
こちらは、XがLに影響し、Mを介した場合と、介さなかった場合の治療効果を足した値になります。
- Y(x, Lx, M(x, Lx))
最後に、この赤はXがLを介さずにMに影響し、さらにMがYに与えた影響を計測しています。
これらの効果をaugmented DAGを使用しながら理解してみましょう。
1) LやMを介さないXの直接効果: Path-specific direct effects
Y(x, Lx*, M(x*, Lx*)) – Y(x*, Lx*, M(x*, Lx*))
Do-formulaを使用してDAGを記載すると上のようになります。
赤色の経路は左右で異なるため、治療効果を計測できます。
一方で、青色の箇所は同じため、相殺されて消えてしまいます。
2) Lを介したXの効果: Path-specific indirect effect through L
Y(x, Lx, M(x*, Lx)) – Y(x, Lx*, M(x*, Lx*))
3) Mを介し、Lを介さない効果:Path specific effect through M
Y(x, Lx, M(x, Lx)) – Y(x, Lx, M(x*, Lx))
推定方法
LとMといった2つのmediatorがある場合も、基本は推定方法はこれまでのcausal mediation analysisとは変わりありません。
疫学手法としては、
- G-formula
- IPW
- Sequential g-estimation with structural nested mean model
- Path analysis (Linear SEM)
- Simultaneous Mediator-Outcome Regression model
のいずれかを使用すれば良いでしょう。
g-formulaの場合
例えば上のDAGの場合のg-formulaを考えてみましょう。Cをblockすれば、backdoor-pathを閉じることができると仮定します。
g-formulaを使う場合、simulationの方法を使用して推定できます。手順として、
- doXを割り当てる
- P(L|X, C)を計測し、後にdo(x*)を代入しLをsimulaitonする(Lsim)
- P(M|L, X, C)を計測し、do(x*)とLsimを代入し、Msimを作る
- P(Y|X, L, M, C)を計測し、do(x*), simL, simMを代入し、Ysimを作る
- YsimをdoXで推定する
になります。
実際にどのようにcodeを組むかは、またの機会にご紹介できればと思います。
まとめ
今回はmediatorが2つある場合のcausal mediation analysisについて解説してきました。
Mediatorが増えた場合、natural decompositionを行い、それぞれのmediatorを介する経路と、介さない経路を推定することができます。
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