ドンペリドンの有効性は1970年代から行われているようです。硏究数はわずかですが、小児でも研究は行なわれていたようです。
今回はそのうちの1つをご紹介しようと思います。
Dhondt F, et al. Domperidone (R 33 812) suppositories: an effective antiemetic agent in diverse pediatric conditions, A multicenter trial. Current Therapeutic Research. 1978; 24: 912-923
ドンペリドン(ナウゼリン®︎)は日本国内でもよく使用されていますが、その有効性のほうはどうでしょうか。
研究の方法
今回の研究は、嘔吐で受診した小児を対象に研究がベルギーで行われました。
治療は
- ドンペリドン(ナウゼリン®︎)
- プラセボ
のいずれかをランダムに座薬として投与しています。
アウトカムは、
- 追加投薬の必要性とタイミング
- 総合的な評価
などを指標にしています。
研究の結果と考察
最終的に49名の患者が対象となりました。内訳は、
- ドンペリドン:24名
- プラセボ:25名
となっています。6割は胃腸炎による嘔吐でした。平均は5歳、体重は16kgくらいです。
2つ目の投薬の必要性
嘔吐の具合をみて、2回目の投薬の必要性をみています。
ドンペリドン | プラセボ | |
〜2時間 | 0 | 1 |
2〜4時間 | 7 | 11 |
4〜8時間 | 15 | 10 |
8〜12時間 | 1 | 2 |
12〜24時間 | 1 | 1 |
24時間〜 | 0 | 0 |
投薬なし | 0 | 0 |
2回目の投薬の必要性は、どちらのグループも変わらなそうでした。
3回目の投薬の必要性
2回目の投薬後の嘔吐の具合をみて、3回目の投薬の必要性を検討しています。
ドンペリドン | プラセボ | |
〜2時間 | ||
2〜4時間 | ||
4〜8時間 | 7 | 16 |
8〜12時間 | 8 | 4 |
12〜24時間 | 7 | 5 |
24時間〜 | 0 | 0 |
投薬なし | 2 | 0 |
3回目の投薬は、プラセボのほうがより早期の印象ですね。
4回目の投薬の必要性
3回目の投薬後の嘔吐の具合をみて、4回目の投薬の必要性を検討しています。
ドンペリドン | プラセボ | |
〜2時間 | ||
2〜4時間 | ||
4〜8時間 | 0 | 3 |
8〜12時間 | 2 | 12 |
12〜24時間 | 4 | 2 |
24時間〜 | 1 | 2 |
投薬なし | 17 | 6 |
4回目の投薬なしは、ドンペリドングループのほうが、追加投薬の必要性が低かったようですね。
全体の評価
治療全体の評価を、すばらしい、良い、普通、悪いの4段階で分類しています。
ドンペリドン | プラセボ | |
すばらしい | 15 | 5 |
よい | 6 | 4 |
普通 | 2 | 12 |
悪い | 1 | 4 |
全体的な評価はドンペリドンのほうがよさそうですね。
考察と感想
今回のベルギーで行われたランダム化比較試験では、ドンペリドン(ナウゼリン®︎)はプラセボと比較して、追加投薬の必要性や総合的な評価では有効性がありそうな印象でした。
一方で、今回のアウトカムはやや曖昧な印象です。たとえば別のアウトカムの指標として、
- 嘔吐回数
- 食事の摂取量
- 嘔吐が止まるまでの時間
など様々な指標があります。こちらのほうが一般的でわかりやすい指標のように思いました。
ドンペリドンのRCTは小児でも複数ありますが、最終的にメタ解析ができずにいるのも、各研究でアウトカムが微妙に異なり、統合するのが難しいですね。
まとめ
今回の研究では、ドンペリドン(ナウゼリン®︎)はプラセボと比較して、追加投薬の必要性や総合的な評価では有効性がありそうな印象でした。
ですが、アウトカムの指標がやや曖昧で、解釈がやや難しい印象です。