アメリカ小児科学会(AAP)などの学術団体は1〜2歳未満の小児のフルーツジュース摂取に対して否定的な見解(つまり、摂取を勧めない)をしています。その根拠の1つが、体重増加不良があります。
今回はこの根拠となる症例集積研究がありますので、そちらをご紹介させていただければと思います。
今回の症例集積研究では、体重増加不良で紹介された8例について、フルーツジュース(主にりんごジュース)の摂取をやめることで、改善しています。
研究結果
今回の症例集積研究は、ニューヨークにて、生後14〜27ヶ月の体重増加不良の小児8人(男児4人;女児4人)を対象に行われました。
全ての患者はフルーツジュースを1歳未満(およそ生後6〜9ヶ月)から始めていました。
8人中7人は中流階級以上の家庭の子供です。
8人の身長と体重のデータは以下の通りでした
ID |
月齢 |
性別 |
体重 |
身長 |
1 |
14 |
女 |
6.7 |
68 |
2 |
27 |
女 |
9.0 |
84 |
3 |
24 |
男 |
8.6 |
78 |
4 |
26 |
男 |
8.8 |
78 |
5 |
17 |
女 |
8.5 |
76 |
6 |
23 |
男 |
9.6 |
82 |
7 |
21 |
男 |
8.8 |
83 |
8 |
26 |
女 |
9.4 |
81 |
フルーツジュースの制限
フルーツジュース摂取制限をする前後の栄養の内訳は以下の通りです:
制限 |
前 |
後 |
kcal/kg |
86.5 |
108 |
ジュース摂取 |
573 |
50 |
ジュースからのkcal |
38% |
2.6% |
炭水化物からのkcal |
65% |
47% |
タンパク質からのkcal |
10% |
17% |
脂質からのkcal |
25% |
36% |
ジュース制限前は1日に必要なカロリーが摂取できておらず(1〜3歳:100 kcal/kgが目安)、炭水化物からのエネルギー摂取が多く、タンパク質や脂質の摂取量が少ない傾向にありました。
ジュースを制限することで、乳製品などの摂取量が増え、結果的に適切なエネルギー摂取ができています。
体重の変化をみると、1ヶ月あたり0.08 kg (SD, 0.05)ほどの体重増加が、0.36 kg (SD, 0.16)にまで増えています。
考察と感想
体重増加不良(痩せた赤ちゃん)で紹介された8人の乳幼児の栄養状態や摂取量を評価したところ、フルーツジュース(主にりんごジュース)を大量に摂取していることがわかりました。
このフルーツジュース摂取を制限することで、乳製品など脂質からの栄養が増え、最終的に成長・発達に適切なエネルギーを摂取できるようになっています。
乳幼児の栄養を考える上で非常に重要な点は、成長・発達することです。栄養のなかでも脂質栄養は小児にとって、もっとも効率の良いエネルギー源です。
先ほどの表にも示したように、フルーツジュースを多く摂取することで、相対的に乳製品などの脂質からの栄養摂取が減るため体重増加不良をきたしたと考えられる8症例でした。小児科医としても、体重増加不良をみたときに、保護者から栄養摂取の評価をすることが重要ですが、その内訳も詳しくしっておくと診療に役立つかもしれないですね。
フルーツジュースと聞くと、なんとなく健康によさそうなイメージをもってしまいますが、乳幼児に関しては必ずしも当てはまらない点は気をつけておいたほうがよさそうですね。
まとめ
フルーツジュースの過剰摂取が原因と思われる体重増加不良の乳幼児の症例集積研究でした。過剰摂取をさけ、適切な栄養摂取を促すことで栄養状態が改善しています。
こちらの論文は、多くのガイドラインにも引用されており、症例集積ではあるものの、非常に重要なものと考えています。