急性中耳炎の治療といえば、軽症であれば痛み止めなどの対処療法で綿密に経過を見て、中等症以上であれば抗菌薬を使用するのが割と多い診療方針と思います。つまり、痛み止め(解熱鎮痛薬)と抗菌薬を使用するのがスタンダードということです。
一方で、抗ヒスタミン薬を中耳炎に使用すべきかは議論の分かれるところです。
確かに、抗ヒスタミン薬で分泌物が減らせれば、中耳炎も軽快してくれそうですが、抗ヒスタミン薬には副作用があるのと、実際に風邪などに伴う鼻水などを、どこまで減らせるのか、それにメリットがあるのかは別問題です。
動物実験レベルですがロイコトリエン拮抗薬を急性中耳炎に有効であった報告もありますし、人間でも行われた経緯もあるようですが、今回は日本国内で行われた研究があったため、ご紹介させていただきます。
Nakamura Y, et al. The effect of the leukotriene antagonist pranlukast on pediatric acute otitis media. International journal of pediatric otorhinolaryngology.
研究の方法
今回の研究は日本国内で行われたランダム化比較試験で、
- 2〜12歳の小児
- 急性中耳炎(AOM)と診断
などが対象になっています。
治療は、抗菌薬+対症療法(咳止め、去痰薬、抗ヒスタミン薬)に加えて、
- プランルカスト(〜28日)
を使用しています。治療に関しては、盲検化がされていませんでした。
アウトカムは、
- AOMスコアの変化
- Tympanometryの結果
- 他の薬剤の必要性
などを評価しています。
研究結果と考察
最終的に102人の患者が参加し、各グループごと数名がドロップアウトしたため、
- プランルカスト:50人
- コントロール:47人
となっています。対象患者は
- 4.5歳
- 17kg
- AOMスコア 9点
くらいでした。
AOMスコアの推移について
AOMスコアは耳痛、発熱、鼓膜初見などから算出されていますが、そのスコアの推移をプランルカスト群とプラセボ群で比較しています。(図は論文より拝借)
AOMスコアに関しては、プランルカストを使用しても、しなくても大きなかわりはありませんでした。
ティンパノメトリーについて
ティンパノメトリーの結果は以下の通りでした。
プランルカスト | コントロール | |
A or C1 | 39 | 26 |
B or C2 | 11 | 21 |
B or C2となるリスクはコントロール群のほうが統計学的な有意差をもって高かったです。
その他の薬について
抗ヒスタミン薬は
- プランルカストグループで80%に
- コントロールグループで97.8%に
使用されていました。
こちらの結果については、そもそも盲検化されていない状況で他の薬を比較する意義があるのか、急性中耳炎に抗ヒスタミン薬を使用する必要性があるのか、と考えてしまいました。著者らも、この件については、論文中に記載していますね。
考察と感想
プランルカストを使用しても、急性中耳炎のAOMスコアはかわらないけれども、ティンパノメトリーの結果は改善する印象のある研究でした。
懸念点としては盲検化されていない点でしょうか。ただし、ティンパノメトリーはある程度は客観的な指標ですので、その点はバイアスが入りにくいかもしれません。ティンパノメトリーをする人のみを盲検化するという方法もありますが、おそらくこの方法もされていなかったようです。
まとめ
プランルカストを使用しても、急性中耳炎のAOMスコアはかわらないけれども、ティンパノメトリーの結果から示唆される滲出性中耳炎のリスクは改善する印象でした。
論文のlimitationとしては盲検化されていない点が最大の懸念でして、他の研究結果を参照してみようと思います。
●最近、夏バテのせいか、スムージーにはまっていて、いっそのこと家でつくれたらと思っています。バイタミックスの購入を検討しています。