乳幼児は感冒(かぜ)をきっかけに、ヒューヒュー、ゼーゼーすることがあります。一過性のもので終わってしまうことが多いのですが、気管支喘息との区別が難しいことがあります。
ロイコトリエン拮抗薬はモンテルカスト(キプレス®︎、シングレア®︎)やプランルカスト(オノン®︎)が国内で使用されています。主な目的は気管支喘息の長期コントロールであり、これについては多数の科学的根拠がある治療です。
一方で、乳幼児の一過性の喘鳴や急性細気管支炎にロイコトリエン拮抗薬が有効かは、まだはっきりしていない点も多いです。そこで、今回の研究が行なわれたようです。
研究の方法
今回の研究は、
- 生後6〜24ヶ月
- 正常な身長・体重
- 8週以内に喘息のような症状の既往がある
- 慢性疾患なし
などを対象に行なわれています。
治療は、
- モンテルカスト
- プラセボ
のいずれかをランダムに割りつけ6週間投与した、二重盲検化ランダム化比較試験です。
アウトカムは、
- β刺激薬の使用
- 血中好酸球数
- 医療機関の予定外受診数
- ステロイドの使用
などを比較しています。
研究結果と考察
最終的に175人がモンテルカストに、81人がプラセボに割りつけられています。
7割は男児、白人が6割で、平均15ヶ月でした。
臨床的な症状
投与期間中の臨床的な症状の割合を比較してみましょう。
M | P | |
上気道感染 | 32% | 21% |
喘息 | 18.9% | 22.2% |
発熱 | 13.1% | 13.6% |
下痢 | 10.9% | 12.3% |
嘔吐 | 8.6% | 11.1% |
(M = モンテルカスト;P = プラセボ)
外来フォロー中の症状はほとんど同じですね。他の研究ではモンテルカストを使用すると下痢が起こりやすいと報告されていたものもありますが、この研究ではそうでもなかったですね。
そのほかのアウトカム
そのほかのアウトカムを比較してみましょう。
M | P | |
β刺激薬の使用割合 | 33.5% | 40.5% |
β刺激薬の使用数/日 | 0.75 | 0.87 |
好酸球数 | 260 | 270 |
時間外受診あり | 9.8% | 14.8% |
ステロイド使用 | 14.9% | 7.4% |
喘息発作あり | 16.7% | 18.5% |
喘息の悪化 | 1.2% | 2.5% |
(M = モンテルカスト;P = プラセボ)
ほとんどの結果はモンテルカストを使用したグループのほうが良さそうですが、ステロイドの使用率がモンテルカストグループで高いのが気がかりですね。
いずれも統計学的な有意差はありませんでした。
これだけではモンテルカストを6〜24ヶ月の乳幼児に使用するメリットは、はっきりとはわからないですね。
感想と考察
今回はモンテルカストが24ヶ月未満の乳幼児の喘鳴に有効かを検討していますが、はっきりとしたメリットは認められませんでした。
確かにモンテルカストを使用したほうが、若干ですがデータはよいのですが、ステロイドの使用割合など一貫性に欠ける箇所もあり、追加検証が必要と思います。
一過性の喘鳴なのか、喘息なのかの区別もこの年齢は難しいのですが。もし分けることができれば、喘息になりやすそうな小児だけを集めて研究をしてみるのも1つの手段と思いました。
まとめ
今回はモンテルカストが24ヶ月未満の乳幼児の喘鳴に有効かを検討していますが、はっきりとしたメリットは認められませんでした。