急性中耳炎は自然軽快することがあり、必ずしも抗菌薬でないことがあります。例えば、アメリカ小児科学会によると、抗菌薬の適応は以下のように推奨されています。
年齢 |
耳漏 |
症状 |
耳漏なし |
耳漏なし |
2歳未満 |
抗菌薬 |
抗菌薬 |
抗菌薬 |
経過観察 |
2歳以上 |
抗菌薬 |
抗菌薬 |
経過観察 |
経過観察 |
「症状が強い」とは、
- 全身状態が良くない
- 耳痛が2日以上
- 39℃以上の発熱
などが該当します
小児の急性中耳炎において、抗菌薬がどのくらい有効なのかを検討したシステマティックレビューとメタ解析があります。
Rovers M, et al.Antibiotics for acute otitis media: a meta-analysis with individual patient data. Lancet. 2006;368:1429-35.
こちらの報告では、主に6つのRCTの結果を統合し、抗菌薬が小児の中耳炎の症状軽快にどのくらい有益であるのか、どの集団に効きやすそうか、抗菌薬を使用しない場合の自然経過を詳細に記しており、アメリカ小児科学会のガイドラインにもよく反映されています。
年齢別にみた抗菌薬の有効性
3〜7日後に中耳炎の症状(発熱や痛み)が持続している割合を比較しています。
|
Abx |
P |
RR |
RD |
NNT |
< 2歳 |
33% |
48% |
.77 |
15% |
7 |
> 2歳 |
20% |
31% |
.86 |
11% |
10 |
例えば、2歳未満と2歳以上でリスク比(RR)、リスク差(RD)、Number needed to treat (NNT)を計算すると上のテーブルのようになります。どちらのグループでも抗菌薬は中耳炎の症状を短縮させる効果がありそうですが、2歳未満のほうが効果は強そうです。
両側性 or 片側性でみた有効性
両側性か片側性かでも比較しています。
|
Abx |
P |
RR |
RD |
NNT |
両側性 |
27% |
47% |
.72 |
20% |
5 |
片側性 |
24% |
30% |
.92 |
11% |
17 |
年齢 x 両側性の組み合わせで
年齢と両側性で層別化した結果は以下の通りです。
|
Abx |
P |
RR |
RD |
NNT |
2歳未満 |
|
|
|
|
|
両側性 |
30% |
55% |
.64 |
25% |
4 |
片側性 |
35% |
40% |
.92 |
5% |
20 |
2歳以上 |
|
|
|
|
|
両側性 |
23% |
35% |
.84 |
12% |
9 |
片側性 |
19% |
26% |
.92 |
7% |
15 |
低年齢・両側性のほうがより抗菌薬の恩恵を受けられる可能性が高いです。
耳漏について
耳漏 |
Abx |
P |
RR |
RD |
NNT |
あり |
24% |
60% |
.52 |
36% |
3 |
なし |
28% |
42% |
.80 |
14% |
8 |
考察と感想
それぞれのグループで層別化をして抗菌薬の有効性を評価しています。全体としては、
- 2歳未満
- 両側性
- 耳漏あり
のほうが抗菌薬の有効性がありそうな印象です。このあたりは、AAPのガイドラインにもしっかりと反映されている印象です。
それぞれの治療グループで日別に中耳炎の経過をみていますが、次回の記事で説明できればと思います。