これまでは小児のインフルエンザとオセルタミビル(タミフル®︎)、ザナミビル(リレンザ®︎)、ラニナミビル(イナビル®︎)について考察を述べてきました。
今回はペラミビル(ラピアクタ®︎)についてです。
この薬は小児のインフルエンザでも使用されていますが、特徴としては点滴であることが挙げられます。このため、入院患者での使用率が年々増えています。
今回はいくつかの研究結果を簡単にレビューさせていただければと思います。
ペラミビル使用後の発熱や症状の期間
小児インフルエンザにおけるペラミビルですが、比較群はありませんでしたが、ペラミビル投与後に解熱する時間やウイルスの排泄率を検討した研究があります1。例えば、pH1N1インフルエンザにおいて、インフルエンザの症状が軽快するまでの時間は約30時間、解熱するまでの時間は約20時間でした1。症状が軽快するまでの時間や解熱するまでの時間は、年齢によってあまり変わらない印象です。
国内での非ランダム化試験
RCTではありませんが、日本国内の小児科クリニックにおいてペラミビルとオセルタミビルを比較した研究はあります2。9歳以下の小児を対象にペラミビルまたはオセルタミビル開始後の発熱期間の中央値を比較していますが、インフルエンザA(2日vs. 1.5日)とインフルエンザB(2日vs. 2日)とほとんど変わりありませんでした。
システマティックレビューとメタ解析
(文献3より拝借)
小児・成人のデータを利用して、オセルタミビルと比較して、ペラミビルがインフルエンザにおける発熱期間を短縮させるか検討したシステマティック・レビューとメタ解析もあります3。
2つのランダム化比較研究の結果を統合してメタ解析をすると、解熱するまでの時間はオセルタミビルもペラミビルもほとんど同じです(平均差, 5.86時間; 95%CI, -24.66 to 36.38)。
一方で、観察研究の結果を統合すると、ペラミビルのほうが平均して7時間だけ短い傾向にありました(平均差, -7.17時間;95%CI, -11.00 to -3.34)。ペラミビルは入院患者で使用されるケースが多く、この7時間の短縮効果が臨床上はあまり重要ではない印象です。小児のデータが少なく確定的なことを述べるのは難しいですが、インフルエンザにおいてペラミビルはオセルタミビルより有効性が優れるわけではなさそうです。
まとめ
過去の研究をみると、ペラミビルはオセルタミビルとほとんど効果はかわりません。
一方で、ペラミビルは点滴をしないといけないのと、薬のコストが余分にかかります。
この辺りを考慮して実臨床に臨みたいところです。
参考文献
- Sugaya N, Kohno S, Ishibashi T, Wajima T, Takahashi T. Efficacy, safety, and pharmacokinetics of intravenous peramivir in children with 2009 pandemic H1N1 influenza A virus infection. Antimicrob Agents Chemother. 2012;56(1):369-377. doi:10.1128/AAC.00132-11
- Hikita T, Hikita H, Hikita F, Hikita N, Hikita S. Clinical Effectiveness of Peramivir in Comparison with Other Neuraminidase Inhibitors in Pediatric Influenza Patients. Int J Pediatr. 2012;2012(April 2011):1-4. doi:10.1155/2012/834181
- Lee J, Park JH, Jwa H, Kim YH. Comparison of efficacy of intravenous peramivir and oral oseltamivir for the treatment of influenza: Systematic review and meta-analysis. Yonsei Med J. 2017;58(4):778-785. doi:10.3349/ymj.2017.58.4.778