科学的根拠

乳児の急性細気管支炎にステロイドは有効か?

  •  乳児の急性細気管支炎にステロイドは効きますか?

この質問に答えた研究はいくつかあります。

乳幼児は気道(空気の通り道)が狭く、風邪をひいた際にゼーゼーとした呼吸になってしまうことがあります。代表的なのは、RSウイルスでしょう。RSウイルス感染症に関しては、以下のリンクでまとめてあります:

小児科医が解説するRSウイルスのまとめRSウイルスって何ですか? 『RSウイルス』はどこかで聞いた、という方が多いのではないでしょうか。 ですが、「RSってなに?」と、ど...

気管支喘息発作ではステロイドを使用することがありますが、これは気道の炎症・浮腫や過敏性を軽快させるのが目的です。このため、急性細気管支炎でも同じように有効性がありそうと考えたくなりますが、実際に研究結果をみてみないとわからない点もあります。

今回は、乳児の急性細気管支炎にステロイドは効くのか検討した研究結果を解説していきましょう。

マミー
マミー
赤ちゃんが風邪をひいてゼーゼーしているのですが、ステロイドは効くのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
実際に、乳児の細気管支炎にステロイドが有効だったのか検討した研究があるので、みてみましょう。

研究の方法

今回の研究は、カナダで行われた二重盲検ランダム化比較試験が行われました。対象となったのは、

  •  6週〜12ヶ月
  •  急性細気管支炎
  •  救急外来に受診
  •  RDAI (respiratory distress assessment index) 4-15
    (< 4は軽症; > 15は重症)
  •  喘息や吸入ステロイドの既往がない
  •  慢性疾患がない

の乳児となります。

治療について

治療は、

  1.  エピネフリン吸入 + ステロイド(Dexamethasone)
  2.  エピネフリン吸入 + プラセボ
  3.  プラセボ吸入 + ステロイド
  4.  プラセボ吸入 + プラセボ

の4通りのいずれかをランダムに割り当てられています。

アウトカムについて

アウトカムは、

  •  7日以内の入院率

などを中心に検討しています。

研究結果と考察

最終的に800人が研究に参加しています。月齢の中央値は5ヶ月、男児が6割、RDAIは8点、呼吸数は48回、心拍数は150, SpO2は97%、体温は37.7℃でした。

入院率の比較について

7日以内の入院率の比較をしています。

治療 入院率 リスク比
E + S 34/199
(17.1%)
0.65
(0.45-0.95)
P + S 51/199
(25.6%)
0.88
(0.63-1.23)
E + P 47/198
(23.7%)
0.96
(0.69-1.33)
P + P 53/201
(26.4%)
Ref

(E, エピネフリン; S, ステロイド; P, プラセボ)

ステロイドやエピネフリン単剤では、ほとんど治療効果はなさそうですが、両方の治療を行うと、リスク比は大きくさがっている印象です。

入院率の推移をみても、ステロイドとエピネフリン吸入を併用したほうが低い傾向にあるのがわかります・

考察と感想

こちらの研究では、プラセボと比較して、エピネフリン+ステロイドの組み合わせで急性細気管支炎を使用すると、入院率がやや下がっているのが分かります。

問題点としては、エピネフリンやステロイドの量です。今回の研究では、

  •   エピネフリン(吸入): 3 mgを生食3 mlで溶き吸入
  •   Dexamathesone (内服) : 1.0 mg/kg (max 10mg)

と日本国内の多くの施設と比較して、かなりの量を使用している点です。

用量が少なければ、治療効果が十分に得られない可能性もありますので、日本の実臨床に一般化する際には注意が必要かもしれません。

まとめ

今回の研究では、エピネフリン、ステロイド単剤では急性細気管支炎の入院率を改善させませんでしたが、両方を使用することで入院率は下がっています。

使用した薬剤の量が大きく異なるので、日本の小児の実臨床に当てはめる場合には注意が必要でしょう。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。