6歳くらいまでの小児は、かぜを引いた時に喘鳴を起こしてしまうことがあります。この現象が生じてしまう理由ですが、乳幼児の気道は細く、分泌物が貯留しやすいのも一因と考えられています。
気管支喘息とは少し病態が異なりますが、このゼーゼーした状態をステロイドでのりこえられないかと考えた医師も多いですし、現在でも使用されている方もいます。
気管支喘息発作にステロイド内服は、現在ではスタンダードな治療法ですが、このウイルス性の喘鳴は病態がやや異なるため、有効であるかは不明でした。そこで、2009年にこの疑問に答えるために、ランダム化比較試験が行われていますので、今回はそちらをご紹介しようと思います。
Panickar J, et al. Oral Prednisolone for Preschool Children with Acute Virus-Induced Wheezing. NEJM. 2009; 360: 329-338.
研究の方法
今回の研究は、2005-2007年に、二重盲検ランダム化比較試験がイギリスで行われています。対象となったのは、
- 10ヶ月〜6歳
- 急性細気管支炎による入院患者
- 慢性疾患なし
などを基準にしています。
治療について
治療は、
- 経口ステロイドを5日間
- プラセボを5日間
のいずれかを投与しています。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 入院日数
- Preschool Respiratory Assessment Measure (PRAM)
- β刺激薬の使用
- 7日後の症状
などを指標にしています。
研究結果について
最終的に687人が対象となり、プラセボが344名・ステロイドが343名でした。
月齢は26ヶ月、喘鳴の既往ありは6-7割、最初の喘鳴エピソードは16ヶ月、喘息の診断は15-20%、湿疹は4割、食物アレルギーは5-10%、気管支炎の既往は25%くらいの分布です。
8割の患者は、喘鳴のため入院した経験はありませんでした。
入院日数
平均入院日数をステロイドvs. プラセボで比較していますが、
- ステロイド0時間
- プラセボ9時間
となっており、ステロイド投与グループのほうが10%ほど短いです(幾何平均の比, 0.90; 95%CI, 0.77–1.05)。とはいえ、2.9時間の差はあまり臨床的には意味のないものと思われます。
入院している割合をプロットした図は以下の通りです。
プラセボもステロイドも入院後の経過はほとんど変わらないのがわかります。
β刺激薬の使用について
|
プラセボ |
ステロイド |
差 |
N |
341 |
342 |
|
使用回数 |
66.70 (88.10) |
52.80 (74.50) |
-14.08 (-26.62〜1.54) |
β刺激薬の使用回数は、ステロイドグループのほうがやや少ないです。
PRAM scoreについて
PRAM scoreは0〜12点で評価しています。
|
プラセボ |
ステロイド |
差 |
0h |
4.27 (1.28) |
4.32 (2.31) |
0.05 |
4h |
2.74 (2.30) |
2.48 (2.00) |
-0.29 |
12h |
2.28 (2.03) |
2.49 (1.98) |
0.20 |
24h |
1.58 (1.64) |
1.52 (1.75) |
-0.06 |
抗菌薬の使用率も比較していますが、プラセボグループ13%、ステロイド11.9%とほとんど変わりありませんでした。
まとめ
今回の研究では、ウイルス性の喘鳴で入院した乳幼児において、ステロイドは入院期間の短縮や症状軽快にはほとんど有効性を認められませんでした。
問題点としては、ウイルス性の喘鳴なのか、喘息発作なのかの区別ですね。これはなかなか一筋縄ではいかない印象です。
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