乳幼児はかぜを契機に下気道感染症を起こすことがあります。
ゼーゼーという喘鳴が聞こえたり、呼吸が苦しそうにしている場合は入院が必要になります。
2歳未満の乳幼児の急性細気管支炎の治療法に関する報告は複数あります。例えば、
- アドレナリン(エピネフリン)
- ステロイド
- β刺激薬
などがあります。
これらの薬の有効性をまとめたシステマティックレビューとメタ解析はあります。最近のものですと、2011年のものでしょうか。簡単に報告していこうと思います。
研究の方法
今回の研究は、2009年までに
- Medline
- Embase
- EBM reviews (Cochrane central)
- LILACS
- PubMed
- Iran MedEx
などを介して発表された研究を対象にしています。
24ヶ月以下の急性細気管支炎を対象にして、異なる気管支拡張薬・ステロイドの治療効果を比較しています。
アウトカムは、
- 入院率
- 入院日数
などを比較しています。
統計モデルはランダム効果を、さらに複数の研究をBayesian network modelを使用しています。
研究の結果
最終的に48の研究、4897人の患者がメタ解析の対象となっています。
2時間後の臨床スコア
こちらの表は、治療2時間後の臨床スコア(CS)の差を比較しています。赤側はpoint estimateのみで、有効性が高かった方を示しています。
ここの研究数は少なく不正確な推定になりますが、
- アドレナリン
- アドレナリン + ステロイド
が一貫して臨床スコアを改善させている印象です。
12-24時間後の臨床スコアについて
こちらの結果から判断するのは難しいですが、やはりアドレナリンを使用した方が良さそうな印象です。ステロイドを使用するべきかは迷いますが、若干、足を引っ張っている印象あります。
3-10日後の臨床スコアについて
こちらは外来患者の3−10日後の臨床スコアの比較になります。この結果ですと、やはりアドレナリンが良さそうで、ステロイドの追加をした方が良いのかもしれません。
入院患者:1−3日後
アドレナリンの結果がないのが残念ですが、ステロイドがスコア減少には頭1つ抜けている印象です。一方で、β刺激薬は微妙にスコア完全させる一方で、抗コリンやくは足を引っ張りそうな印象もありますね。
入院リスクについて
これらは過去の研究結果で、すでに他記事で紹介しています。
プラセボと比較して、アドレナリン吸入は、初日の入院リスクを低下させる効果がありました。リスク比にして0.67 (95%CI, 0.50–0.89; NNT, 15)。
ステロイド(dexamethasone)とアドレナリンのコンビは、治療開始7日後の入院リスクを低下させています。リスク比にして0.65倍(95%CI, 0.44–0.95; NNT, 11)となります。
考察と感想
過去の研究から得られたメタ解析の結果によると、アドレナリンまたはアドレナリン + ステロイドのコンビが短期・長期的にみても有効そうな印象を受けています。
日本の実臨床ではどうでしょうか。実際の全国の治療パターンに長けているわけではないですが、β刺激薬 +/- ステロイドを使用している方が多い印象もあり、アドレナリンを使用する方の方が少数派の印象もあります(あくまで、私の知る範囲です)。
別に悪い選択肢とは思いませんが、過去のエビデンスから、より良さそうな治療に変更しない、または現行治療方針を継続する理由など知りたいところですね。
まとめ
今回のメタ解析によると、アドレナリン単剤 or アドレナリン + ステロイドの使用は小児の急性細気管支炎に有効性がありそうな印象がありました。
ただし、全体的に研究数が少なく、エビデンスの集積はさらに必要と思います。