インフルエンザにも色々なタイプがありますが、大きく分けてA型とB型に分かれます。
タミフルはインフルエンザの治療薬として知っている方も多いですが、
- オセルタミビル(タミフル®︎)は、インフルエンザB型には効きづらい
と感じている小児科医が2000年代には多かったようです。そこで、今回の研究が行われたようです。
研究方法と結果
今回の研究は、インフルエンザA (H3N2)またはB型に罹患して、オセルタミビル(タミフル®︎)を内服した患者の発熱期間を比較した観察研究です。
年齢やワクチン摂取状況などで層別化もしています。
全体の結果
まずは全体の結果を見てみましょう。
対象となった患者の平均年齢はA型は6.97歳、B型は5.16歳でした。
A | B | |
N | 127 | 362 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.31日 (0.76) |
2.18日 (1.39) |
確かに、A型の方がやや短めの経過であるのがわかります。
発熱期間毎に分布を示しています。
A | B | |
N | 127 | 362 |
1 | 69.1% | 32.6% |
2 | 31.5% | 29.6% |
3 | 7.1% | 15.5% |
4 | 2.4% | 13.3% |
5 | 0 | 6.4% |
6 | 0 | 2.5% |
7 | 0 | 0.3% |
年齢別の結果
A | B | |
1-5歳 | ||
N | 44 | 218 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.42日 (0.78) |
2.37日 (1.46) |
6-10歳 | ||
N | 60 | 116 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.23日 (0.82) |
1.97日 (1.28) |
11-15歳 | ||
N | 23 | 28 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.30日 (0.54) |
1.54日 (1.81) |
確かに、B型の方が発熱期間は長い傾向にあります。
ワクチン摂取歴で層別化した場合
A | B | |
ワクチンあり | ||
N | 54 | 139 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.36日 (0.70) |
2.14日 (1.36) |
ワクチンなし | ||
N | 48 | 194 |
発熱期間, 平均 (SD) |
1.36日 (0.90) |
2.25日 (1.42) |
縦方向にみて、ワクチン接種の有無であまり発熱期間は変わっていないです。横方向に見ると、A型とB型では、ワクチン接種の有無にかかわらず、B型の方が発熱期間が長い傾向にあります。
考察と感想
この論文ですが、観察研究をしたところ、オセルタミビルを内服した小児において、インフルエンザによる発熱期間はA型よりB型の方が長い傾向がありました。さらに、年齢・ワクチン接種歴で層別化しても、同様の傾向であった。
上のような文章を書くと「B型には有効性がないの?」と言う議論になりそうですが、そうとも言えません。そもそも、A型とB型が同じような経過を辿るなら、多少はそう言う議論になるかもしれませんが…。
B型にタミフル®︎が効くかは、A型と比較するのではなく、プラセボ(偽薬)と比較する必要があります。
今回の研究では、単にタミフル®︎を内服した環境下で、B型の方が熱が長かったですよ、と言う話であり、B型には効きづらいと言う議論はあまりしない方が良いように感じます。
まとめ
インフルエンザに罹患した小児を対象に観察研究をしたところ、オセルタミビルを内服した小児において、発熱期間はA型よりB型の方が長い傾向がありました。
さらに、年齢・ワクチン接種歴で層別化しても、同様の傾向した。
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