- タミフル®︎(オセルタミビル)の効果を知りたい
- 実際にどのくらい発熱期間が短縮するのか?
- 日本の小児におけるデータはあるのか?
インフルエンザのシーズンになると、治療1つをとってみても、様々な質問が出てきます。少し古いデータではありますが、2001-2005年の国内のデータを見つけたので、そちらを参照してみましょう。
研究の方法
今回の研究は、2001-2005年にインフルエンザで受信された患者が研究の対象となっています。発熱後、48時間未満、20歳未満で38度以上の発熱がある小児が対象です。
インフルエンザは迅速検査で診断し、その後にオセルタミビル(タミフル®︎)を内服するかは家族の判断に委ねています。
タミフル®︎を内服した小児と、そうでない小児の、クリニック受診後の発熱期間を比較しています。
結果と考察
こちらが結果です。
インフルエンザAとB、年齢で層別化された結果があります。
- A/H1N1 = 5人
- A/H3N2 = 257人
- B = 257人でした。
発熱〜クリニック受診まではおよそ一日、ワクチン接種はタミフル®︎投与群は37.5%、投与しない群は25%ほどでした。
受診後の発熱期間は以下のとおりです。GLMで年齢、体温などを統計学的に考慮した後に算出された発熱期間になります。
インフルエンザA型
タミフル®︎ | なし | あり |
N | 14 | 228 |
発熱期間 | 3.1日 (2.5, 3.6) |
2.0日 (1.8, 2.1) |
< 6歳 | ||
N | 9 | 122 |
発熱期間 | 3.6日 (2.8, 4.3) |
2.1日 (1.7, 2.4) |
> 6歳 | ||
N | 5 | 106 |
発熱期間 | 2.5日 (1.6, 3.4) |
1.8日 (1.6, 2.1) |
(*()は95%CI)
確かに、タミフル®︎を使用した方が、発熱期間は1日ちょっと短くなっていますね。特に6歳未満の場合、短縮効果が大きいように見えます。
反面、Nは小さいですが無治療で様子を見た患者もおり、自然経過がどの程度かの参考になると思います。
インフルエンザB型
タミフル®︎ | なし | あり |
N | 47 | 176 |
発熱期間 | 3.2日 (2.9, 3.5) |
2.8日 (2.6, 3.0) |
< 6歳 | ||
N | 23 | 80 |
発熱期間 | 3.5日 (3.0, 4.0) |
2.9日 (2.5, 3.3) |
> 6歳 | ||
N | 24 | 96 |
発熱期間 | 2.9日 (2.5, 3.4) |
2.6日 (2.4, 2.9) |
(*()は95%CI)
こちらはインフルエンザBの結果になります。確かに、タミフル®︎を使用した方が、半日ほど発熱期間が短縮している印象ではあります。
発熱期間は、内服しないグループではAとBではそれほど変わらない印象ですね。
考察と感想
上の表は、実際の発熱期間ではなく、クリニック受診後のになるため、1日足して考える必要があります。タミフル®︎を使用しない場合は、3.5日〜4.5日くらいの発熱期間であり、内服することでA型であれば1日ほど、B型であれば0.5日ほど発熱期間が短縮することになります。
少し古いデータですが、コントロール群のデータはインフルエンザの自然経過を把握する上で重要と思いました。もうちょっとNがあればと思うのですが、研究の性質上、仕方ない気がします。個人的には「(基礎疾患のない小児であれば)薬を飲まなくても、少し発熱期間は長くなるけれども、基本的に自然に治るので、内服は必須ではない」という選択肢があるのを伝える必要もあるかと思っています。国内では「発熱→インフルエンザ→検査→内服・吸入」がすでに出来上がってしまったフローですが、これは他の先進国などを見ても、やや特殊な状況というのは知っておいても良いでしょう。
ワクチン接種率は統計学的に考慮されておらず、治療群の方がワクチン接種率が高いのを考えると、発熱期間の短縮効果は過大評価されている可能性があるかもと思いました。
まとめ
今回の観察研究では、タミフル®︎を内服することでA型であれば1日ほど、B型であれば0.5日ほど発熱期間が短縮することが示唆されています。
やや古いデータなのと、Nが少ない、ワクチン接種が統計学的に考慮されていないなどの点は挙げられますが、貴重なデータと思います。
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