風邪の自然経過を知ることは非常に重要です。今回はBMJに掲載されたシステマティックレビューとメタ解析について説明していこうと思います。
「1週間経つけど、咳が治らず不安」と受診される保護者の方は結構います。もちろん、全員が風邪の合併症がないわけではありませんが、普通の風邪でも50%くらいのお子さんは1週間後も咳は続いています。
こういったデータを知ることで、診療にも役立ちますし、保護者の方もお子さんが少し長引いている症状は、自然な経過だということを納得していただけると思います。
研究結果と考察
最終的に23の介入試験と25の観察研究が解析対象となっています。
耳痛の経過について
この結果から、風邪に併発した中耳炎の症状は、50%は3日以内に、90%は7〜8日以内に軽快しています。
咽頭痛の期間について
咽頭痛に関しては、1日後に53%、2〜3日後に35%ほどが残っています。数日ほどで治ってしまうことが多いのでしょう。
咳の期間について
咳の軽快は思ったよりゆっくりと感じる方が多いでしょう。
およそ50%のお子さんは、10日ほどで咳が軽快します。
また、90%のお子さんは25日以内に咳が改善しますが、残りの10%は25日以上続いています。
クループ症状について
クループ症候群では「犬が吠えるような咳」「オットセイの鳴き声のような咳」が出現します。この独特な咳ですが、1日で50%が、3日で80%が改善しているのが分かります。
気管支炎の症状
こちらは気管支炎の症状になります。咳や喘鳴(ゼーゼー)が該当するのでは無いでしょうか。
気管支炎の症状は、13日までに半数が軽快していますが、その後の経過ははっきりとはわかりません。16日時点では約60%が改善している推定になります。
風邪症状について(鼻水など)
風邪症状というやや曖昧な表現ですが、こちらの期間も追跡しています。
咳や咽頭痛、耳痛などはすでに報告されており、おそらく鼻水・くしゃみ・鼻閉などが該当するのでは無いでしょうか。
上気道症状に関しては、10日前後で約半数にまで減少しています。一方で、15日経過しても、まだ20%の小児に症状は残存しています。
考察と感想
簡単そうなグラフですが、これをシステマティック・レビューとメタ解析ですると、とてつもない労力を要したと思います。
90%以上の小児が治るまでの期間を調べていますが、これですらまだデータが不十分なのが分かります。
風邪の自然経過を知ることは重要です。咳が1週間続いても、半分くらいのお子さんは同様の経験をしていることが分かります。
一方で、3週間以上続くような咳は、比較的少ないことが分かります。
こういったデータをもとに、今、目の前にいるお子さんがどの段階にいるのか、その症状の長さは正常の経過なのか否か、ある程度の参考にはなるでしょう。
まとめ
以上の結果をまとめると、以下のようなグラフになります。
小児の風邪において、
- クループ 1-2日
- 耳痛 2-3日
- 鼻汁 11-12日
- 咳 10-11日
- 気管支炎による咳 13-14日
で半数が回復することが分かります。咳は25日で90%以上の小児が改善しています。
かぜと言うと数日〜1週間くらいで治るイメージの方が多いかもしれませんが、意外と症状は長引きます。