- 子どもの風邪の自然経過を詳しく知りたいです
- かかりつけの先生はもう治っていると言ったけれど、まだ症状が残っています
風邪の症状については悩みが尽きないでしょうが、一般的な自然経過を知ることは重要です。前回はこちらの研究結果を説明しましたが、0−4歳の小児を中心に風邪の自然経過をみた研究もあります。
研究の結果
こちらの研究は、MEDLINEやEMBASEを使用して、小児の風邪の自然経過を見ています。保護者から見て症状がどうか、医療者から見てどうか、合併症はどのくらいで生じていたのかを確認しています。
風邪の自然経過について
保護者から見て風邪が軽快したと感じた人の割合を比較してたデータが記載されています。
日付 | 1-2 | 5-8 | 14 | 20-21 | 28 |
n = 20 | 60% | 75% | 80% | 95% | 100% |
最初の1週間で3/4が、2週間で80%が、4週間で100%が回復を実感で来ています。
2週間くらいで治ることが多いですが、中には長引いてしまう方もいるようですね。
(*元文献はこちら: Ackerman BD. Treatment of undifferentiated respiratory infections in infants. Clin Pediatr 1968; 7: 391-395.)
「治った」の判断は医師と保護者で異なる
経過(日) | 5-8 | 14 | 20-21 | 28 |
保護者 | 8% | 34% | 47% | 70% |
医師 | 51% | 76% | 82% | 93% |
こちらは別の研究結果になりますが、医師の方が「軽快した」と判断するのはやや早そうですね。
外来の短時間での様子や、保護者からの間接的な情報になるため、やや過小評価しがちなのかもしれませんね。あとは「軽快」の基準が、医療者と保護者で異なることはあり得るでしょう。
症状別にみた割合
残存した症状 | 5-8日 |
鼻汁 | 55% |
咳 | 49% |
食欲 | 14% |
喘鳴 | 10% |
咽頭痛 | 5% |
発熱 | 1% |
咳や鼻水といった症状は、半分くらいの割合で残っています。
一方で、発熱や咽頭痛といった症状はそれほど長く続いていないのが分かります。
合併症について
風邪の合併症も様々ですが、以下の表でまとめてみました。
合併症 | 割合 | |
発疹 | 20%* (5-44) |
10%** (4-21) |
中耳炎 | 5%* (0.1-25) |
18%** (10-30) |
下痢 | 10%** (4-21) |
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嘔吐 | 12%** (5-23) |
|
肺炎/気管支炎 | 5%* (0.1-25) |
10%*** (4-20) |
このデータを見ると、発疹は10-20%、中耳炎は5〜18%、下痢は10%、嘔吐は12%、気管支炎や肺炎に進展することは5-10%くらいありますね。
確かに風邪をひいた拍子に蕁麻疹が出たり、よくわからないウイルス性の発疹を診ることは小児科外来でよくあります。
中耳炎は軽微なものをとれば30%くらい生じると言われていますが、今回の研究では5〜18%でした。
「風邪でも下痢は出ますか?」は割と小児科外来で定番の質問な気がしますが、答えは「10%くらいで出ることがあります」になりそうですね。
風邪が気管支炎・肺炎に進展するケースが5-10%の割合で起こるのは、小児科医として知っておいても良いでしょう。
まとめ
今回の研究では、小児の風邪症状がどのくらい持続するのかを症状毎に調査したり、風邪に伴う合併症の割合を確認しています。
なかなか有益な情報が多かったように思います。